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<どうする登米の医療>(中)医師の苦悩 昼夜問わぬ勤務限界

当直勤務中の大坂さん(右)。昼間の診察に続いて夜間、入院患者の急変と救急患者に備える=8月下旬、登米市民病院

 宮城県登米市の市立病院の医師不足と経営難が深刻だ。市は本年度、常勤医の確保ができず、運営する3病院4診療所のうち登米(とよま)、津山の2診療所を休止した。2005年の9町合併で新市が誕生して13年。合併前と同じ数の公立医療機関が存続する中、医師不足による収入減、非効率的な運営により、病院事業の累積赤字は150億円を超える。地域医療が崩壊しかねない登米市の現状を報告する。(登米支局・小島直広)

 8月下旬の月曜日午後6時、登米市迫町の登米市民病院。通常の診療時間を過ぎても1階救急外来に患者は続々とやって来る。
 「どっちの指が痛い? こっちかな」。診察室に当直の内科医、大坂英通さん(45)の声が響く。指を挟んでけがをした男の子が、母親とともに駆け込んだ。
 10分後にはもう一人、腎結石の疑いがある中年男性が来院。その6分後には救急車が入り、ベッドから落ちた男性が老人ホームから運ばれた。その後も薬疹が出た女性らが来院し、大坂さんは分刻みで診察に追われた。一段落したのは午後9時すぎのことだ。
 「きょうはまだ楽な方。金曜の夜や年末は、もっと忙しい」と言う。

<当直と救急兼務>
 大坂さんのこの日の勤務は、外来の新患診療。午前9時から午後6時まで、昼食を取る暇もなく働き、そのまま当直勤務に入った。翌日は正午に帰宅するのが決まりだが、午後も勤務を続けることが多い。
 大坂さんは当直と内科週末当番(電話待機)をそれぞれ月1、2回こなす。週末に2日連続でしっかり休日が取れるのは、2週に一度だという。
 市民病院の常勤医は18人。うち60歳以上の4人を除く14人が、夜間の入院患者百数十人の急変に備える当直医として、翌朝8時半まで泊まり込みで勤務する。加えて夜間の救急外来も同じ当直医が1人で担当することが市民病院の慣例となっている。
 「本来なら当直医は入院患者担当の医師が1人、救急外来担当の医師1人の計2人いるのが理想。でもローテーションが回らないからそうはなっていない」と大坂さんは言う。
 医師の絶対数が足りず、夜間の当直医の半分は、東北大からの医師派遣に頼っているのが実情だ。

<増える定年退職>
 7月4日、同市登米(とよま)町であった登米診療所休診に伴う説明会。住民から休診に至った責任を問う厳しい意見が相次いだのに対し、市民病院の松本宏院長は医師不足の窮状をこう訴えた。
 「安易に休診する訳ではない。このままでは中核の市民病院が立ち行かない。登米市の医療全体が成り立たなくなる」
 市医療局によると、市立病院の医師は2005年の広域合併時には計45人いたが、現在の3病院4診療所体制で30人。高齢化が進んでおり、今後5年間で11人が65歳の定年で退職する見通しという。

[登米市民病院]1950年、県厚生連佐沼病院として開院、55年に旧迫町立、2005年に登米市立、11年に現名称。市立医療機関(3病院4診療所)の中核・災害拠点病院で、内科、外科、整形外科、リハビリテーション科、眼科、皮膚科、泌尿器科、耳鼻咽喉科など13診療科。稼働病床は227床。


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2018年10月14日日曜日


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