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<ニュース深掘り>地域で育む制度理解を 里親委託を進めるために

 里親家庭を取り巻く現状や課題を取材し、9月に夕刊で特集を連載した。虐待や貧困などを理由に生みの親の元で暮らせない子どもが増え、その多くが乳児院や児童養護施設にいる中、国と自治体は里親への委託を推進している。全ての子どもに家庭での養育を保障するには、地域社会に里親制度の正しい理解を広げることが欠かせない。

 10月は厚生労働省が定める里親月間で、制度の広報活動が全国で集中展開されている。宮城県が設置した「みやぎ里親支援センター けやき」(仙台市青葉区)のト蔵(ぼくら)康行センター長(63)は「里親制度は最も適した養育者を探す子どものための仕組み」と説明する。
 社会の支えが要る子どもを家庭で預かり、成長や自立を見守る制度だが、世間では「子育てをしたい大人のために子どもを紹介する制度」「養子縁組をすること」などと誤解している人が多い。
 東北6県の里親委託率はグラフの通り。全国平均18.3%、宮城は33.1%だが、委託されずにいる子どもたちはまだまだ多い。
 委託が進まない一因として、宮城県子ども・家庭支援課の担当者は「実の親が『里親に子どもを取られる』と強い拒否感を示すことが少なくない」と言う。里子は養子ではないなど養子縁組制度との違いを実の親に分かってもらえるかが重要になる。
 里親の希望者の側にも課題がある。児童福祉の関係者によると、里子の年齢や性別、将来的に養子縁組ができるかといった希望が多いため条件が合わず、委託できない場合もあるという。
 母親が望まない妊娠だったケースなどで養子縁組に救われる子どももいて、それぞれの制度が「家庭養育」を支えている。里親希望者には戸籍のつながりばかりを重視せず、大きな心で子どもを迎える人がもっと増えてほしい。
 厚労省の制度運営要綱は里親の役割を「個人的ではなく社会的な養育」と位置付ける。宮城県も「里親家庭はいわば独立した施設で、里親は施設長のような立場」(子ども・家庭支援課)という認識の周知に努める。

 昨年8月、厚労省は「3歳未満はおおむね5年以内、そのほかの未就学児はおおむね7年以内に里親委託率75%以上を実現」など、従来より踏み込んだ数値目標を導入する方針を決めた。「全ての子どもに家庭での養育をという当たり前の状況を最大限のスピードで実現する」(担当者)のが狙いだが、児童福祉の現場には「あまりにも性急だ」と衝撃が走った。
 導入方針について、要保護児童の支援を研究する東北福祉大の草間吉夫特任教授(52)は幕末になぞらえ「社会的養育維新の状況になっている」と指摘。国の方向性には賛同しつつ「数値ありきではなく、自治体間の取り組みの差を考慮して丁寧に進めるべきだ」と求める。
 宮城県は行政機関と施設、里親会の連携によって里親委託率が例年全国上位に入っているが、県民には知られていない。社会的養育を進める大前提として、まずは地域が里親の必要性や制度を知り、特別視せずに当たり前の存在と理解すること。それが、全ての子どもの健やかな育ちにつながるのではないだろうか。(夕刊編集部・橋本智子)

[メモ]里親の希望者は、都道府県や政令市が実施する研修を受講し、児童相談所による家庭訪問調査などを経て里親名簿に登録される。種類は(1)社会的養護が必要な子どもを預かる養育里親(2)障害や非行行為などで養育に課題がある子を預かる専門里親(3)預かった子との養子縁組を希望する養子縁組里親(4)3親等以内の親族による親族里親−の四つ。国はこのほか、一時保護里親や専従里親など新たな類型の創設を検討中。


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2018年10月15日月曜日


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