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<かなえのタイヤ>小5の震災学習(上)家族の願い 自分の夢を貫いて

佳苗さんの母校で三陸の産物を売る瀬尾真治さん(中央)と裕美さん(左から2人目)=9月30日、東京都内

 東日本大震災の災禍と再生の歩みを学び、語り継ごうと、三陸の海を見下ろす大船渡市越喜来(おきらい)小で5年生15人が演劇の稽古に励んでいる。児童劇「かなえのタイヤ」は、校庭の一角に据えられたタイヤ遊具にまつわる実話に基づく。娘を失った両親、教師、子どもたち。20日の上演を前にそれぞれの思いをつづる。(大船渡支局・坂井直人)

 9月最後の日曜日、都心は文化祭のシーズンを迎えていた。
 東京農大一高の学校祭では、ブースに大船渡市三陸町越喜来地区などから直送したイカやワカメ、フノリが並んだ。
 売り子は瀬尾真治さん(64)、裕美さん(60)夫妻=東京都練馬区=と、その長女で卒業生の佳苗(かなえ)さんの部活動仲間。壁には越喜来小で上演する「かなえのタイヤ」の宣伝チラシが張ってあった。
 「娘が愛した三陸をアピールしたくて」と2013年から毎年出店している。
 11年3月11日、北里大海洋生命科学部2年の佳苗さん=当時(20)=は、三陸キャンパスのある越喜来地区で津波に遭い、行方不明になった。
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 水族館の学芸員になるのが夢だった。「こんないいところはないよ」。親元を離れ、浜辺の集落で学生生活を謳歌(おうか)していたさなかの出来事だった。
 佳苗さんを捜すために東京から何度も足を運び、住民たちと触れ合う中で、瀬尾さん夫妻にも佳苗さんの残した言葉の意味が分かってきた。
 「最後の一年が人生で一番濃かったんじゃない」「出てこないのは、ずっとここにいたいからかな」
 「娘が喜ぶことは何でもしてあげたい」と地元の夏祭りに協力し、海岸近くで清掃や植樹に汗を流した。首都圏で仲間と三陸の食材を扱う居酒屋まで始めた。
 津波で全壊し、高台に移転新築した越喜来小の校庭にあるタイヤ遊具も瀬尾さん夫妻と越喜来地区の交流の証しだ。持ち主の帰りを待ち続けるタイヤを持参して17年2月、仲間と一緒に据え付けた。
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 そんな瀬尾さん夫妻に今年8月、越喜来小5年の担任浦嶋健次さん(35)から相談が持ち込まれた。
 越喜来が大好きだった佳苗さんのこと。被災した浜と交流を続けるご両親のこと。みんなが遊ぶタイヤ遊具は、どうやってできたのかを授業で取り上げたいという依頼だった。
 「また一つ、つながりができちゃったね」と快諾した。
 震災を学ぶ授業は瀬尾さん夫妻による16日の講話で締めくくる。震災に向き合い始めた子どもたちに「自分が一番やりたいと思うことを貫いてほしい。必ず後ろには、親が付いている」と話して聞かせるつもりだ。


2018年10月16日火曜日


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