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<新聞大会>記念講演 AI時代に求められる読解力

[あらい・のりこ]一橋大法学部、米イリノイ大数学科卒。イリノイ大5年一貫制大学院を経て、東京工業大より博士(理学)取得。専門は数理論理学。主著に「生き抜くための数学入門」など。
新井氏に質問する大学生

◎公教育教科書原点に

<国立情報学研究所社会共有知研究センター長・教授/一般社団法人教育のための科学研究所代表理事・所長/新井紀子氏>

 2011年、AI(人工知能)に試験問題を解かせる「ロボットは東大に入れるか」と題したプロジェクトを始めた。今ではAIという言葉が新聞に載らない日はない時代になったが、その1年前に「将来おそらくAIブームが来る」と予測した。
 アマゾンなどインターネット企業が勧めるAIをどれだけ信頼して良いか、国家的に分析する必要があると感じたことから、AIの東大入試プロジェクトを進めた。
 日本には16年の時点で756大学があり、そのうち535大学から合格可能性80%以上という判定を全国模試で受けた。
 AIができるのは数学の「論理」と「確率」と「統計」しかない。文章を理解することができないAIに、どうして中高生が負けるのか。教科書が実は読めていないのではないかという仮説を立て、教科書、新聞から150字程度の文を抜き出して、読めているかどうかを問うテストを作り、5万人に受けてもらった。
 正答率の低い中高生は、「−以外の」「−のうち」という文章の意味を正しく理解できていなかった。AIと同様、キーワード検索のようにしか文章を読めないことがだんだん分かってきた。推論、イメージから導く分類、具体例を理解することはAIに絶対できない部分だが、そこが人間も弱かった。
 小中学校では穴埋めプリント学習が大はやりで、文章がしっかり読めなくてもできる授業が進められている。
 教科書や新聞が読めるか読めないかで、入れる高校の偏差値がほぼ完全に決定され、その後どの大学に進学できるかも決定する。
 AIが人間の能力を超えるシンギュラリティー(技術的特異点)が来る見込みは全く立っていない。だが、読む力がないと勉強の仕方が分からないので、仕事を奪われた時に新しい職種に移れない。労働力不足なのに失業や非正規雇用が増大して、格差拡大、内需低下、人口減少につながりかねないというのが日本の現状だ。
 中学卒業までに中学校の教科書を読めるようにすることは、公教育がするべき最重要課題だと思う。東大でも指導要領の縛りがあり、教科書の内容以外は入試問題に出題できない。
 丁寧に基礎・基本に戻って、教科書がしっかり読める子どもに育てる。全国各地の中学生が卒業までに教科書を読めるようにすることに、これからの研究者人生を尽くしたい。

◎情報読み取る力 紙から/学生と質疑応答

 新井紀子氏の記念講演では、招待された宮城県内の大学生や高校生らとの質疑応答もあった。
 読解力を身に付ける方法について尋ねた高校生に新井氏は「数学や理科の教科書を、すらすら読めるまで音読しよう」と助言。「難しければ中学の教科書でもいい。読んだ時に意味が分かるかどうかで人生が変わってくる」と話した。
 会場からは「紙の活字が読解力を上げると考えられるか」との質問も出た。新井氏は「デジタルは情報があふれ、飛ばし読みになりがちだ。紙だと限られた情報を読み取るリテラシーが身に付く」と強調し「新聞は特に字数の制限で主語や目的語を省く表現が多い。新聞を読んでこそ培われる力がある」と指摘した。


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2018年10月17日水曜日


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