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<新聞大会>研究座談会 活字、世代つなぐツール

新聞力を磨く経営戦略などをテーマに意見交換した研究座談会

 第71回新聞大会が仙台市青葉区の仙台国際センターで開かれた16日、「新聞界の直面する諸課題 新聞力を磨く経営戦略」をテーマに研究座談会があった。日本新聞協会会長の白石興二郎読売新聞グループ本社会長をコーディネーターに、丸山昌宏毎日新聞社社長、協会副会長の一力雅彦河北新報社社長、大島宇一郎中日新聞社社長、河村邦比児熊本日日新聞社社長が意見を交わした。座談会に先立ち、国立情報学研究所社会共有知研究センター長・教授で一般社団法人教育のための科学研究所代表理事・所長の新井紀子氏が「AI時代に求められる読解力」と題して記念講演した。

◎災害時配達手段確保へ 日本新聞協会・白石興二郎会長あいさつ

 今年は北陸地方の記録的大雪、西日本豪雨、北海道地震と大規模災害が相次いでいる。北海道地震では道内全域停電が起き、多くの社の新聞製作に影響した。
 東日本大震災を機に新聞社同士で災害時の相互援助協定締結が進むが、印刷しても配達できない地域が生じるという新たな問題点も浮かび上がっている。さまざまな災害に備え、非常時に新聞を待ち望む読者に届ける対策をさらに講じていかなければならない。
 新聞の価値、公共的な役割を社会に理解してもらうには、新聞に触れる機会が少ない人にまず手に取ってもらう必要がある。NIE活動では小学校から高校までの学習指導要領の総則に新聞活用が明記され、格好の学習材であるとの認識が浸透しつつある。
 新聞は消費税率引き上げで軽減税率の対象となり、より厳しいまなざしが向けられる。新聞を取り巻く環境は一層厳しくなっている。民主主義を支える新聞の役割を改めて認識し、この難局を一丸となって乗り越えていきたい。

◎歴史の記録者重い使命 河北新報社・一力雅彦社長あいさつ

 東日本大震災から7年7カ月がたった。被災地に対する全国の皆さんからの物心両面の多大な支援に厚くお礼申し上げる。
 被災地では道路、鉄道などインフラ面の復興が進む一方で、今なお5万6000人以上の人たちが避難生活を余儀なくされている。
 災害公営住宅での孤立やコミュニティーづくりの問題、水産業の人手不足など、長期的支援が必要な課題は数多く残されている。大会を「被災地の今」を見る機会にしていただきたい。
 震災を体験していない子どもたちが小学校に通い始めた。震災の記憶のない人たちに、あの日あったこと、教訓をどう伝えていくか。「歴史の記録者」「時代の目撃者」たる新聞の果たす役割は大きい。
 デジタル化が進む中、正確な報道を積み重ね、毎日定時に配る新聞の使命は重い。多様で安定した社会の実現に向け、価値を提供する新聞の役割は増している。新聞界が今の時代にふさわしい新たな一歩を踏みだすヒントを持ち帰ってほしい。

◎研究座談会 新聞界の直面する諸課題新聞力を磨く経営戦略

<各社の取り組み>
 白石 新聞を取り巻く現状認識と各社の取り組みを教えてほしい。

 丸山 今年のノーベル平和賞を受賞した女性活動家のナディア・ムラド氏は「声を上げられない人の声になる」と述べた。これがジャーナリズムの一番の根底であり、使命だ。
 私たちは旧優生保護法のキャンペーン報道で新聞協会賞を頂いた。戦後間もないころから起きていた問題なのに、なぜ新聞社として見過ごしてきたのかという自省の念が背景にある。新聞がやらなければならないこと、新聞でなければできないことをやることが、新聞全体の価値を高めることにつながる。

 一力 新聞記事は5W1Hと伝えたいことが明確で、論理的に書かれている。社会の教科書として、新聞も読解力を担う一翼になると伝えていく努力が必要になる。
 当社は毎月1回、「土曜しんぶんカフェ」を開き、教師や教師を目指す学生と意見交換している。学校教育に新聞を活用するNIEに取り組む先生は少数派だが、関心を持つ先生は少なくない。カフェは授業に使えるヒントを探ってもらう場になっている。
 企業に記者経験者らを派遣し、情報活用法などを教えるNIB(ニュースペーパー・イン・ビジネス)にも取り組み、地元企業の若手の広報や宣伝担当者を集めたバスツアー「かほくニュースバス」を実施した。被災地を回った後、分かりやすいプレスリリースの書き方などを教え、実際に自社広告を書いてもらった。
 人材育成や、知名度を上げて求人増につなげたいという地元企業の課題解決もサポートできる。新聞の新しいファンづくりにもつながっており、新聞の裾野を広げていきたい。

 大島 中日新聞社は、販売店が小中学校で出前授業を行っている。未購読者との接点づくりが難しい中、子どもを通じてつながることができる。学校を相手にする際は業界全体でのアピールが重要だ。

 河村 熊本地震後、避難所で奪うように新聞が読まれ、新聞の持つ力を再確認した。新聞への信頼を保つため、記者教育に力を入れている。先輩記者が新人に経験談を伝えるほか、昨年はハンセン病施設を訪ねた。全社員から知恵を集め、総力を挙げて人材育成に取り組んでいきたい。
 地域でお年寄りと接する若手警察官にこそ新聞を読んでもらおうと、熊本県警の警察学校のカリキュラムに新聞活用講座を組み込んでもらった。全国でも例がない取り組みだ。

<デジタル時代に>
 白石 デジタル時代の新聞についてどう考えるか。

 大島 ニュースは本当に「ただ」でいいのか。現状の市場環境や風潮が続けば、新聞の力が狭まることは間違いない。精度の高い報道を続けるには正当な対価が必要。業界全体で研究していきたい。

 一力 明るい話題を提供したい。フィギュアスケートの羽生結弦選手(仙台市出身、宮城・東北高出)の国民栄誉賞受賞を記念した特別紙面制作に当たり、インターネットを通じ全国から個人協賛が瞬く間に集まった。「新聞がファンの思いを一つに束ねてくれた」との感謝の声もいただき、「紙の力」を実感した。紙とデジタルを連動させた「ハイブリッド型」の事業展開を強めていく必要がある。

 丸山 スマートフォンがあるから新聞はいらないというが、ニュースは誰が提供しているのか。著作権者として価値を認めさせるべき時代に来ている。ネットの世界にもコンテンツを発信し、そこから新聞に戻ってきてもらう仕掛けをつくる必要がある。「デジタルファースト」ではなく、形を変えて工夫していく必要がある。ニュース産業には膨大なお金と時間がかかる。

 白石 新聞力を磨くためにはどうすればいいか。

 丸山 学校に対し、業界を挙げてNIEに取り組む仕組みをみんなで考えるべきだと強く思う。

 一力 日本は数年前から世界一の新聞用紙の消費国となった。日本はまだまだ新聞を読む層が厚く、活字好きの国民性がある。魅力的なコンテンツをいかに伝えるか。いま新聞を読んでいる強い支持者、読者をどう守るかが大事だ。

 大島 同感だ。トヨタの首脳は「工業製品の中で『愛』を付けて呼んでもらえる商品はあまりないが、車は『愛車』と呼んでもらえる。こよなく愛してもらえる商品作りを誇りにしている」と話していた。
 新聞にも「愛読者」がたくさんいる。読者との結び付きは以前より強くなっている。愛読者にこれからも末永く付き合ってもらうことが、われわれの媒体の力を磨くことにつながる。

 河村 社会人の学び直しを意味するリカレント教育が注目されている。子どもから高齢者まで、各世代をつなぐ共通テキストこそ新聞と言っていい。新聞はコミュニケーション力、表現力、独創性を磨くための宝庫だと伝えたい。

◎会場から

<質の高い記事届ける 朝日新聞社・渡辺雅隆社長>
 新聞社がしっかりとした仕事をするには、不動産事業を含めて経営基盤の強化は避けて通れない。でも、それだけでは駄目。新聞協会賞を受賞した公文書改ざんの特報の紙面を手に入れるため、コンビニエンスストアを5店回ったという手紙を頂いた。力のある記事は読みたいと思わせる。質の高い記事を家庭に、若者に届けるために切磋琢磨(せっさたくま)しなければならない。

<無料サイト対策必要 信濃毎日新聞社・小坂壮太郎社長>
 新聞を読まない理由として最近、明らかに増えているのが無料ニュースアプリを見れば十分という意見だ。言葉は悪いがニュース泥棒。欧州では対策の動きが出ている。日本でも対策を取らなければいけない。これは1社ではできない。新聞業界として、少なくとも正当な対価を得られるような世の中の雰囲気をつくり出していく必要がある。

<社挙げ地域課題解決 新潟日報社・小田敏三社長>
 当社は販売や広告、編集といった全社の垣根を取り払おうと「総合プロデュース室」を置いた。クライアントや県民、地域の課題解決を外部に振るのではなく、全社の総合力で取り組む試みだ。プロの記者を育て、信頼される取材力と発信力を守るには相当なコストが必要。非ジャーナリズムの情報をビジネス化することで、編集の根幹であるジャーナリズムを支えたい。

<デジタル部門も強化 神戸新聞社・高士薫社長>
 新聞のコンテンツやジャーナリズムに基づくスクープは大事だが、いかに良い新聞を作り続けても、発行部数減の流れをなかなかせき止めることはできない。そこでデジタル(部門強化)のアクセルを踏み続けている。当面は紙とデジタルのハイブリッド経営で、紙面の発行を維持する。報道セクションの機能維持を最も重視しながら、業務を継続させていく。

<読者は時代の発信者 北海道新聞社・広瀬兼三社長>
 北海道で震度7を観測した地震の後、気付いたことがある。読者欄や暮らし欄で「こんなふうに困った」「長期停電をこうしのいだ」と体験談を募集すると、多くの投稿が集まった。20〜30代の若い女性からも寄せられた。時代の目撃者として体験を発信し、紙に残したいという気持ちが、日本ではまだ廃れていない。読者の思いにどう応えていくかが大切だ。


関連ページ: 宮城 社会

2018年10月17日水曜日


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