岩手のニュース

<かなえのタイヤ>小5の震災学習(中)教師の模索 児童劇に未来託す

校庭のタイヤ遊具で遊ぶ子どもたち
震災学習に取り組む浦嶋さん(右)

 東日本大震災の災禍と再生の歩みを学び、語り継ごうと、三陸の海を見下ろす大船渡市越喜来(おきらい)小で5年生15人が演劇の稽古に励んでいる。児童劇「かなえのタイヤ」は、校庭の一角に据えられたタイヤ遊具にまつわる実話に基づく。娘を失った両親、教師、子どもたち。20日の上演を前にそれぞれの思いをつづる。(大船渡支局・坂井直人)

 「東日本大震災は、語り継ぐことが必要な時期に来ているのではないか」。大船渡市越喜来小5年の担任浦嶋健次さん(35)は、そんな思いを募らせていた。
 震災で越喜来地区は住民88人が犠牲になった。家族や自宅を失った児童もいる。これまで防災教育はしても、震災の出来事そのものを扱うことにはためらいがあった。
 気付けば本年度の1年生は全員が災後生まれ。早晩、全児童が震災未経験世代になる。
 これからの震災学習はどうしたらいいのだろう。職員室でそんなことが話し合われる中、校庭のタイヤ遊具が浦嶋さんの目に留まった。
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 越喜来地区で行方不明になった北里大2年瀬尾佳苗(かなえ)さん=当時(20)=の両親が、地元の人々と交流を続ける中で据えられた。
 児童に身近な遊具にまつわるエピソードを題材に震災の事実を学び、成果を劇にして発表できないだろうか。「震災を昔話にしてはならない。当事者の気持ちを考えることが、子どもたちにとって大事ではないか」と鈴木直樹校長(58)も後押ししてくれた。
 こうして一歩踏み込んだ震災学習が始まる。
 授業ではまず、児童たちが3歳で経験した震災を振り返った。「苦しい、しんどいと思ったら無理しないで」と慎重に授業を進めた。
 「家に戻ったら津波が入っていて、ばんそうこうが湿っていた」「お父さんが消防(関係者)でずっといなかった」「(亡くなった)おばあちゃんは猫を抱いていた」
 児童の被災状況は把握していたが、どれも初めて聞く話ばかり。驚くほど鮮明に震災を記憶していた。
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 浦嶋さんには反省の念があった。大船渡市は1960年のチリ地震津波で甚大な被害に遭っている。震災前に勤務していた小学校で体験文集を読み聞かせしたものの、教える側の自分自身が、どこか人ごとだった。
 越喜来小の教職員は16人。「3.11」に在籍していた教員は既に全員が転任した。
 浦嶋さんは、上演に向け練習中の児童劇「かなえのタイヤ」の台本や資料を学校に残そうと考えている。「繰り返し上演し、語り手を増やしてほしい」。自らも学び、子どもたちと模索しながら作り上げる劇に、震災学習の未来を託す。


2018年10月17日水曜日


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