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<転機の米作り 秋田の産地は今>第3部 黄金の穂、期待と不安(上)予想外 収量減に困惑

便りを手際よく封筒に詰める友基さん(左から2人目)ら。一日がかりの作業だ=10日、秋田県大潟村

 秋田県の水稲の作況指数は9月15日時点で「98」の「やや不良」。農家は「さらに落ち込むのでは」と不安がり、その表情はさえない。第3部は、大潟村と美郷町の農家が待望の出来秋に戸惑う姿を追う。(秋田総局・渡辺晋輔、鈴木俊平)

◎大潟村 専業農家黒瀬友基さん(41)

<1600通の案内状>
 「待ち望んだ収穫の秋を迎えて安堵(あんど)しています」「稲の初期生育が非常に悪く、例年より大きく収量を減らすこととなってしまいました」
 新米の販売が始まる10月中旬、米農家であり販売会社ライスロッヂ大潟代表も務める黒瀬友基さん(41)は、毎年個人の顧客に一年間の水田の様子を記した便りを送っている。今年は喜びと、それとは相反する思いの両方がつづられた。
 封筒には、便りのほかに米や生産委託しているせんべいなどの商品の注文票なども入れる。全部で1600通ほどで、友基さんと母喜多さん(73)や妻恵理さん(40)、パートの女性が中心となって一日がかりで作業する恒例行事だ。
 喜多さんは「商品を顧客に届けるまでが仕事。この案内状から次のステップが始まる」と期待感にあふれた表情を見せた。

<小粒増を懸念>
 一方で友基さんは今年の米作りに複雑な思いを抱いていた。例年より1週間遅れの今月3日に稲刈りを始めたが「全体に少しずつ実が少ない」と漏らす。加えて、小粒のモミが増える懸念を抱いている。主食用ではなく、価格の安い米酢の原料向けなどにせざるを得なくなる。
 主食用は例年だと10アール当たり9俵(540キロ)収穫できるが、今年は8俵(480キロ)台に落ちそうだという。単位面積当たりで1俵(60キロ)減ると、全体の売り上げは300万円以上減る。就農12年目で「こんな落ち込みは初めてだ。意外な年だった」と驚く。

<味は例年並み>
 東北農政局が公表した秋田県内の作柄概況で、10アール当たりの予想収量は大潟村を含む「県中央」は562キロと昨年を19キロ下回る。県全体の見込みは560キロで、近年では2010年の535キロ(確定値)に次ぐ低い数値になる。
 同農政局は、6月の低温と日照不足の影響で穂が少なくなった影響だと説明する。
 「ほかの生産者から低温で生育が止まったと聞いていたが、その後の天候回復で挽回できたと思っていた」と振り返る友基さん。今年は大雨や台風の被害はなく、「水田の見た目も8月までは良かったのに」と困惑を隠さない。
 友基さんはいち早く収穫を終えた仲間の米を味わい、味は例年並みの水準を維持できたことを確認した。「消費者に直接販売しているので、収量より品質が重要。味に影響しなかったのは幸いだった」とホッとした表情を浮かべた。

[秋田県内の作柄概況]9月15日時点での10アール当たりの水稲の予想収量は、大仙市や横手市などの県南で前年比9キロ減の567キロ。県北は同14キロ減の542キロ。東北全体では同3キロ増の567キロを見込む。


関連ページ: 秋田 社会

2018年10月17日水曜日


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