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<かなえのタイヤ>小5の震災学習(下)子どもがつなぐ 悲嘆の先 光探して

佳苗さんの足跡をたどる子どもたち

 東日本大震災の災禍と再生の歩みを学び、語り継ごうと、三陸の海を見下ろす大船渡市越喜来(おきらい)小で5年生15人が演劇の稽古に励んでいる。児童劇「かなえのタイヤ」は、校庭の一角に据えられたタイヤ遊具にまつわる実話に基づく。娘を失った両親、教師、子どもたち。20日の上演を前にそれぞれの思いをつづる。(大船渡支局・坂井直人)

 大船渡市越喜来(おきらい)小の校庭の一角に設置されたタイヤ遊具をテーマに、5年生15人が上演する劇は20日に幕が上がる。
 稽古に先駆けて子どもたちは「かなえのタイヤ」の持ち主が行方不明になる2011年3月11日の足跡をたどった。
 東日本大震災の地震が起きる3分前、北里大海洋生命科学部2年の瀬尾佳苗(かなえ)さん=不明当時(20)=は、市中心部の銀行で現金を引き出した。海に面した越喜来地区に車で戻り、大学の先輩と一緒に避難する途中、姿が見えなくなった。
 「なんで(海側の低い方に)下りたの」。震災前の住宅地図を見て、児童の一人が質問した。
 「こんなに大きな津波が来るとは誰も予想していなかったんだ」。担任の浦嶋健次さん(35)が説明した。佳苗さんは、車いすに乗っていたお年寄りの避難の手助けをして津波にのまれたとみられる。
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 授業では佳苗さんの家族が震災後、越喜来地区に通い続けていることも学んだ。地域住民との交流の中で設置されたのがタイヤ遊具だった。
 「ご家族にとっては正直、苦しい思い出の場所なんだと思う。でも、何で続けてくれるんだろうね」。浦嶋さんが尋ねる。
 しばらく考えて子どもたちが手を挙げた。「佳苗さんが過ごし、お世話になった場所だから」「まだ、佳苗さんが越喜来の海にいるから」
 及川瑛士君(11)は劇で佳苗さんの父真治さん(64)を演じる。「大人っぽくしゃべるのが難しい」と台本に苦戦しながら「悲しいけれど、前向きな気持ちも込めたい」。小学5年が、娘を失った親の葛藤を懸命に理解しようとしていた。
 及川君自身、津波で自宅が流失し、父方の祖母が行方不明になった。6人きょうだいの長男で、3人の妹や弟は「災後生まれ」。「(年下のきょうだいや下級生に)震災であったことを伝えたい」と稽古に励む。
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 5年生15人は10月上旬、越喜来湾を一望する高台に立った。そこには佳苗さんの両親が地域住民の協力を得て建てた慰霊碑があった。花を供えて「かなえのタイヤ」の劇の成功を誓い、佳苗さんにメッセージを贈った。
 <越喜来を好きになってくれてありがとうございました><勇気ある行動などをしっかり伝えられるようにがんばります><海からみていてください>
 震災の死者・行方不明者は1万8000人超。その無念に報いるため、今を生きる私たちは何をなすべきか。三陸の浜で、子どもたちも答えを探していた。


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2018年10月18日木曜日


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