秋田のニュース

<転機の米作り 秋田の産地は今>第3部 黄金の穂、期待と不安(下)収益増、不作でかすむ

早朝から稲刈りに励む照井さん。実りが少なく、作業が進むにつれ落胆の色を濃くした=10日、秋田県美郷町

◎美郷町 兼業農家 照井勇一さん(64)

<3割減を覚悟>
 まっすぐに伸びた稲穂が秋風になびく10月上旬の秋田県美郷町。稲刈りを進めるにつれ、兼業農家の照井勇一さん(64)の出来秋への期待はしぼんでいった。
 「今年は駄目、不作だ」
 もみが多く実った稲は重さで垂れる。目の前に広がるのは、背伸びしきったように直立する稲穂だった。「一本も無駄にできない」と照井さん。稲刈り後の田んぼを歩き回り、農機からこぼれ落ちた稲を一本残らず拾い上げた。
 不作の要因は6月の低温や日照不足だ。「あきたこまち」と「ゆめおばこ」計10ヘクタールの生産量は、年平均から3割減を覚悟する。「せっかくの好機だったのに」と落胆を隠せない。

<支援得られず>
 米の生産調整(減反)が廃止された今年、全国的に増産が見込まれた主食用米は微増にとどまった。米価下落を懸念し、多くの地域が増産を見送ったためだ。
 コメ余り回避の見通しが立ち、全農秋田県本部は2018年産米の概算金を前年から800円引き上げた。あきたこまち(60キロ、1等米)で1万3100円、ゆめおばこ(同)は1万2200円に設定した。
 減反廃止を機に営農スタイルの再構築を強いられる中、照井さんは概算金引き上げで一時的な収益増を見込んでいた。予想外の不作に足をすくわれ「自然相手とはいえ、努力が報われず言葉がない」と嘆く。
 高齢化や後継者不在で、地元農家は減り続ける。周囲の支援を得られない照井さんはただ一人、休む暇なく稲刈り作業に没頭する。
 9月中旬から約1カ月間、毎朝午前4時ごろに起床して農機を走らせた。知人農家からの委託分を含め約20ヘクタールを刈る。もみを一定量集め自宅の乾燥機に掛け、田んぼに戻る。日暮れまで繰り返し、帰宅後は精米や袋詰めの作業に追われる。
 「委託分が年々増えているが、このままだと自分の水田さえ抱えきれなくなる」と限界を口にする。

<出費追い打ち>
 追い打ちを掛けるように、思わぬ出費も重なった。
 米の選別機が9月に故障し、買い替えを強いられた。備品を含めた出費は約50万円に上る。「これ以上の余計な支出は避けないと、もたない」。トラクターや精米機の更新は、数年先に延期することを決めた。
 減反廃止を見据えた収入源確保策の一環で、昨年から地元農協のほか卸売業者とも取引を始めた。「量はないけれど、せめて質は評価されたい」。精米した白粒を手に力なくつぶやいた。

[秋田県内主力品種の概算金]「あきたこまち」は過去最低だった2014年産の8500円(60キロ、1等米)から4年連続で引き上げ。15〜18年にかけて計4600円増。16年産(1万1300円)、17年産(1万2300円)はそれぞれ1000円を追加払いした。


関連ページ: 秋田 社会

2018年10月18日木曜日


先頭に戻る