福島のニュース

<福島知事選>視点論点(中)元NHK解説委員・柳沢秀夫さん 被災地合意、急がずに

[やなぎさわ・ひでお]会津若松市生まれ。早稲田大政治経済学部卒。1977年NHK入局。国際部記者を経て、2000年に解説委員。退局後の今年10月からテレビ朝日系「ワイド!スクランブル」に出演。65歳。

 任期満了に伴う福島知事選(28日投開票)はいずれも無所属の現職と新人の計4人が、東京電力福島第1原発事故からの復興策などを訴えている。選挙戦で問われている課題や、求められるリーダー像をどう考えるか。福島ゆかりの3人に聞いた。(聞き手は福島総局・神田一道)

 −NHK時代は情報番組「あさイチ」の取材で何度も福島を訪れている。
 「初めは2011年秋。番組でキャラバンをやり、会津若松市や福島市を巡った。東日本大震災以降、みんなが考えていたのは普通に戻りたいということ。そこで生きる人の姿を伝えることが、普通を考える手掛かりになると思った。特異ではない普通の生活の姿を伝えたかった」

 −印象に残るのは。
 「僕らが『大変でしょう』と聞くと、『さすけね(福島弁で大丈夫の意味)』と言われる。でも、言葉通りではない。裏の思いをどう伝えられるのか。イマジネーションをどれだけ膨らませるかが問われた」

◆不安を整理

 −東京電力福島第1原発事故による福島の風評被害をどう見る。
 「子どもを抱えた母親の不安を考えると(福島産品に)慎重になる気持ちも分かる。切り捨てられない。思いを丁寧に拾い上げ、なぜ不安に思うかを一つ一つ整理していかないといけない。いきなり『大丈夫』ではけりがつかない」

 −不安の所在を探る必要がある。
 「風評被害は放射線という理化学的な世界の話ではない。心の部分にどう向き合うかだ。誰も明確な指針を示せない難しさはあるが、ただ一つ言えるのはうそをついてはいけないということ。正直に今の現実を見てもらう。『愚直』な姿勢が大切だ」

 −第1原発の汚染水処理や放射線監視装置の撤去問題など、難しさが浮き彫りになっている被災地の合意形成についてどう見る。
 「僕は合意はできないと思っている。この何年かはみんな被災者という言葉でくくられたが、歳月を重ねるほど事情は変わる。多数決や四捨五入でくくること自体無理。もし合意形成を目指すなら、急いではいけない。違う人の声や思いに丁寧に向き合うことは、この時期にまさに問われる」

◆国に意見を

 −復興庁は20年度で廃止される。復興予算もどうなるか分からない。
 「『国のスケジュールで物事を考えてはいけない』と、中央に発信し続けてほしい。福島だからこそ言える。中央の論理にねじ伏せられては駄目。福島には福島の理屈がある。それだけのことが起きている。福島のリーダーにはスピーカーの役割を果たしてほしい」

 −求められる知事とは。
 「県民の声に真摯(しんし)に耳を傾ける人だ。どんな声にも耳を傾け、その声を中央にぶつけてほしい。発想の柔軟さも必要。旧来型の考えにとらわれ過ぎると、硬直化して見えるものも見えなくなる」
 「全てが復興という言葉でくくられがちだが、僕はくくるのが大嫌い。復興の在り方は100人いれば100人違う。上に立つ人は一人一人の処方箋をオーダーメードで出してほしい。理想論であり無理かもしれないが、『一人一人が違うんだ』というマインドを知事には持ってもらいたい」


関連ページ: 福島 政治・行政

2018年10月22日月曜日


先頭に戻る