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<福島知事選 課題の現場>透析治療患者ら消耗 双葉郡→いわき市へ長距離通院 「もっと近くで」願い切実

弁当と水筒を持参し、人工透析を受ける福島県広野町の遠藤さん。時間はかかるが欠かせない治療だ=いわき市小名浜の富岡クリニック
治療を終え、送迎のタクシーに乗り込む遠藤さん。患者仲間と共に約1時間、車に揺られる

 いわき市の診療所のフロアに約50のベッドがずらりと並ぶ。血液から老廃物や余分な水分を取り除いて体内に戻す人工透析。市内の患者に交じり、片道約1時間をかけ、隣接の双葉郡から通う人たちがいる。

<片道30キロ>
 広野町の遠藤忠雄さん(75)は2015年1月、治療を受け始めた。通うのは週3回。1回の透析に4時間を要する。
 午前8時半、送迎のジャンボタクシーに乗り込む。弁当を持参する。自宅に戻るのは午後3時すぎだ。
 「帰宅すると2時間ぐらい、ベッドに横になる」と遠藤さん。正直、片道約30キロの通院の負担は重い。
 東京電力福島第1原発事故前、双葉郡では二つの医療機関が透析治療を行っていたが、今は一つもない。
 遠藤さんが通うのは富岡クリニック。ときわ会グループが富岡町で運営していた。原発事故で中断後、いわき市小名浜で診療を再開した。
 前院長の吉田直人医師(56)は「治療を受けるだけで疲れを感じるのが透析。近くで受けられるに越したことはない」と話す。

<再開困難>
 ただ、郡内での再開は容易ではない。避難先から郡内に戻り、クリニックに通う患者は広野、楢葉両町の17人。原発事故前の2割に満たない。県の集計では郡内全体でも患者は約40人。経営は成り立ちにくい。
 県は相馬、南相馬両市の医療機関向けに透析機器の新増設に補助。国も復興支援の官民合同組織を通じてときわ会の送迎費用を支援し、双葉郡周辺での受診環境を支えているのが現状だ。
 県は今春、富岡町に2次救急を担う病院を開院。郡内の医療機関再開の動きもあるが、専門的医療には十分に手が届いていない。
 「もっと近くで治療を受けられればいいのだが…」。透析患者の遠藤さんの願いは切実だ。(いわき支局・佐藤崇)


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2018年10月24日水曜日


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