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<宮城県南へウエルカム>体験や文化 足元にヒント

ワタリスのワークショップで引地さん(左)から着物の説明を受ける米国の高校生

 宮城県南4市9町が訪日外国人旅行者(インバウンド)誘致に連携して取り組んで3年目になる。一部の地域は観光客が増えたが、全体に効果が及んでいるとはいえない。豊かな自然と伝統文化に恵まれたポテンシャルを生かし、地方創生にどう結びつけるか。試行錯誤する県南を歩いた。(6回続き)

◎インバウンド誘致は今(1)光る

 「外国人がこんなに来るなんて、一切頭に無かった」。インバウンドに大人気の白石市の宮城蔵王キツネ村。村長の佐藤文子さん(72)は感慨深げに言う。

<ネットで人気に>
 オープンは1990年。当初は近郊の家族連れや動物好きが訪れていた。5年ほど前、ふさふさの毛のキツネが群れ、抱っこもできる様子がインターネットの動画投稿サイトで広まり状況が一変した。
 野生ではあり得ない触れ合い体験で人気に火が付き、年間来場者は10万人増の約12万人になった。うち2万人ほどが海外の客だ。公共の交通手段が限られるため仙台空港から片道約2万円を払い、タクシーで訪れる人もいる。
 観光地域づくり推進法人「宮城インバウンドDMO」(丸森町)によると、2017年度の県南4市9町のインバウンドの入り込み数は約3万9600人。前年度より6割近く増えたものの、キツネ村以外の大きな目玉は見当たらない。

<伝統・背景に関心>
 しかし、観光関係者は手をこまねいているわけではない。
 7月下旬、東京などで3週間の語学研修を終えた米国の高校生約50人が、亘理町の複合文化施設「悠里館」を貸し切りバスで訪れた。DMOの関連会社などが、東日本大震災の被災地や地方を知ってもらおうと宮城、岩手両県を巡るツアーを企画し、誘致した。
 高校生らは古い着物地を缶バッジに生まれ変わらせる同町の「WATALIS(ワタリス)」の手仕事を体験。1時間半のワークショップで最も関心を集めたのが、メイン商品の巾着袋「FUGURO(フグロ)」の生まれた経緯をワタリス社長の引地恵さん(50)が語った映像だった。
 引地さんは震災後、着物を仕立てた残りの布で巾着袋を作り、お米を入れて感謝したい人に贈る地元の風習を知った。震災で地域文化の存続が危ぶまれた時、着物地を使った文化を新しい形で受け継ごうと始めたのがワタリスだった。そんなことを英語の字幕付きで説明した。
 映像を熱心に見たジャネ・ビアードさん(17)は「伝統をつなげようとしているのがすごい。環境にもいい」と目を輝かせた。
 ワタリスの拠点には、DMOなどの紹介で昨年から外国人が少しずつ訪れるようになった。引地さんは「商品の背景にあるストーリーに関心を寄せてもらっている」と言う。
 他の場所ではできない体験で人気が出たキツネ村と、地域の文化を見つめるワタリス。両者の事例に、インバウンド誘致のヒントがあるのかもしれない。
(白石支局・村上俊、亘理支局・安達孝太郎)

[県南のインバウンド誘致]丸森、亘理両町が2016年度、東北観光復興対策交付金を活用し、観光地域づくり推進法人(日本版DMO)の設立準備事業に着手。4市9町による「宮城インバウンドDMO推進協議会」が17年2月、県内初の「宮城インバウンドDMO」(丸森町)が同3月に設立され、プロモーションなどに取り組んでいる。


関連ページ: 宮城 社会

2018年10月28日日曜日


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