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<いのち育む海の森>志津川湾ラムサール登録(上)豊穣の藻場

志津川湾の海中に生育する海藻と魚の群れ(宮城県南三陸町提供)

 宮城県南三陸町の志津川湾が10月、ラムサール条約湿地に登録された。多様な海藻・海草が生育し、国の天然記念物の水鳥コクガンの重要な越冬地になっていることが評価された。いのちの揺り籠であり、人々に恵みをもたらしてきた海。条約登録を自然と共生した町づくりにどう生かしていくか。課題と方策を探る。(南三陸支局・佐々木智也)

◎調査積み重ね 生態系に光

 海中に海藻の森と海草の草原が広がる志津川湾。550種類以上の海洋生物が生息し、越冬のため北極圏から飛来するコクガンの重要な餌場になっている。

<研究の空白地帯>
 南三陸町は分水嶺(れい)に囲まれ、山に降った雨は川を伝って古里の海に注ぐ。「海と山は運命共同体。密接な結び付きが湾の多様性をもたらしている」。志津川湾の調査研究に当たる町ネイチャーセンター準備室の研究員阿部拓三さん(44)は強調する。
 志津川湾は北からの寒流と南からの暖流が緩やかに混ざり合い、寒海性と暖海性のコンブ目が共存する貴重な海域だ。町の沿岸5793ヘクタールが、海藻藻場として国内初めて登録湿地になった。
 研究の空白地帯だった志津川湾は研究者の間で注目のスポットだった。条約登録を後押ししたのが町自然環境活用センター(ネイチャーセンター)による20年近くの調査研究だ。任期付き研究員制度を導入し、若手研究者が藻場や生き物の科学的データを積み重ねてきた。

<漁業者も応援へ>
 海は漁業権が絡むため、当初は調査で海に潜る研究者を敬遠する漁師もいた。地元漁協の関係者は「密漁を警戒し、漁業者と学者の間に温度差があった」と振り返る。
 だが、未開の海の生態系が明らかになるたびに、研究者に対する不信感が感謝、そして応援に変わった。阿部さんは「漁業者の理解がなければ国際基準をクリアするデータを得られなかった。地域全体の取り組みが形になった」と話す。
 東日本大震災では海もダメージを受けた。津波で流入したがれきによって海藻が剥ぎ取られ、海草も減ったが、海はよみがえった。震災翌年に環境省が行った調査で藻場に大きな変化は見られず、登録に向けて前進する足掛かりになった。
 一方、震災後に深刻化しているのが、ウニが海藻を食べ尽くす「磯焼け」の問題だ。町と東北大、地元漁協が共同で海に潜り、対策の研究に励んでいる。阿部さんは「地域の宝である海を地道に守っていかなければならない」と力を込める。
 「世界の海」のお墨付きを得た志津川湾。町民がいつまでも誇れる海であり続けるため、町には保全の責務が求められる。


[ラムサール条約]特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地の保全を促す。1971年にイランのラムサールで採択され、75年に発効。自然を利用しながら交流や学習に生かすことを目的に掲げる。2018年10月の締約国会議で宮城県南三陸町の志津川湾と東京都江戸川区の葛西海浜公園が加わり、国内では52カ所が登録湿地となった。


関連ページ: 宮城 社会

2018年10月28日日曜日


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