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<いのち育む海の森>志津川湾ラムサール登録(中)自然との共生

ラムサール条約に登録された宮城県南三陸町の志津川湾=18日

◎漁業林業、環境配慮の動き

 宮城県南三陸町は東日本大震災で壊滅的な被害を受けたが、美しい景観や暮らしに恵みをもたらしてきた海は残った。町内の志津川湾のラムサール条約登録を機に、海の生物や水鳥の越冬を支える藻場の価値に光が当たった。

<過密養殖の脱却>
 「海が身近な存在で考えたことはなかったが、大切な『自然の資本』だと気付かされた」。県漁協志津川支所戸倉出張所カキ部会長の後藤清広さん(58)は登録の意義をかみしめる。
 震災後、町の漁業と林業の分野で自然との共生や持続可能性を目指す動きが広がっている。後藤さんら湾内の戸倉地区のカキ生産者は養殖棚を3分の1に減らし、環境負荷を減らす漁業に切り替える決断をした。
 過密養殖からの脱却は環境向上と経済性の両立を促した。カキの生育期間が3年から1年に縮まり、品質が高まって生産額が上向いた。2016年には環境に配慮した養殖を後押しする水産養殖管理協議会(ASC)の国際認証を国内で初めて取得した。
 後藤さんは「ASCは漁場を守るストッパー。養殖棚を減らしたことで海藻が増え、種ガキが多く採れるようになった」と効果を実感する。

<価値浸透が課題>
 町の基幹産業である漁業を支える志津川湾の生態系の多様性は以前から注目されていた。01年に環境省が「日本の重要湿地500」に選定。10年9月には同省から条約湿地の潜在候補地に選ばれた。
 だが、翌年の震災で計画は白紙になった。復興後を見据え、町は16年の第2次総合計画で「森里海ひと いのちめぐるまち」を将来像に掲げ、登録に向けて再び動きだした。佐藤仁町長は「震災前よりも魅力ある町にするため、条約登録は一つの挑戦だった」と語る。
 行政主導で進めてきただけに、町民との温度差は否めない。町は住民の合意を得るための説明会を18回開いたが、参加者は計63人。会場に1人というケースもあった。条約の価値や意義の浸透が課題だ。
 ラムサール条約関連の地域政策に詳しい中央学院大の林健一准教授(地域政策学)は「住民やNPOなど利害関係者の輪を広げるには、条約は湿地の規制でなく保全や活用を促すものであることを伝え、各立場で関われることを明確に示す必要がある」と指摘する。


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2018年10月29日月曜日


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