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<いのち育む海の森>志津川湾ラムサール登録(下)活用のビジョン

磯の観察会で海の生き物を探す子どもたち=6月、宮城県南三陸町志津川

◎学びの場へ 広がる可能性
 「登録はゴールではなくスタート。町の地方創生の柱として生かしたい」
 宮城県南三陸町の志津川湾が今月、ラムサール条約に登録されたのを受け、アラブ首長国連邦での認定証授与式から戻った佐藤仁町長が意気込んだ。

<「価値の可視化」>
 条約は湿地の保全だけでなく「賢明な利用、交流や学習への活用」を目的に掲げる。町内には登録による観光振興や水産物のブランド化に期待する声もあるものの、官民ともその道筋は描けていないのが実情だ。
 世界的な評価をいかに地域振興に結び付けるか。町内の一般社団法人サスティナビリティセンター代表理事の太斎彰浩さん(48)は「条約の価値を可視化する必要がある」と指摘する。
 先行例の一つに、国内有数のマガンの越冬地として2005年に登録湿地となった大崎、登米、栗原3市にまたがる「蕪栗沼・周辺水田」がある。
 周辺では、冬も水田に水を張る冬期湛水田の取り組みが進められていた。渡り鳥が飛来しやすくなり、土地は鳥のふんで肥沃(ひよく)になる。農薬や化学肥料に頼らずに生産されたコメは、「ふゆみずたんぼ米」のブランドで宮城県内外で販売された。地元の酒造会社の酒造りにも使われている。
 「登録湿地になってコメの知名度が上がった。当初は全国から視察に訪れる人が増え、PRにつながった」。蕪栗沼に隣接する大崎市田尻の伸萠(しんぽう)地区の「伸萠ふゆみずたんぼ生産組合」の事務局長西沢誠弘さん(64)が振り返る。

<豊かな自然発信>
 志津川湾は、海藻藻場の湿地として国内初の登録となる。希少価値をうまくアピールできれば、多くの人が訪れ、自然や環境を学ぶフィールドになる可能性を秘める。
 南三陸町では住民や研究者でつくる団体が自然観察会を開くなど、5年前から草の根の活動を続けてきた実績がある。町も来年2月、国内の登録地の子どもを集めた交流イベントを計画。志津川湾を含む豊かな自然を発信する考えだ。
 町自然環境活用センター(ネイチャーセンター)は東日本大震災で被災したものの、来年度中に再び開設される。調査研究の中核を担うほか、学習や交流の拠点にもなる。
 町ネイチャーセンター準備室の研究員阿部拓三さん(44)は「アクション次第でメリットは無限。研究活動にとどまらず、50年後、100年後を見据えた取り組みが重要だ」と強調した。


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2018年10月30日火曜日


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