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<高エネ機構>排熱再利用、地域活性化へ 吉岡名誉教授ら提唱 蓄熱材でエネルギー「宅配」

吉岡正和名誉教授

 岩手、宮城にまたがる北上山地が建設候補地となっている超大型加速器「国際リニアコライダー(ILC)」から出る排熱を再利用した地域活性化を、高エネルギー加速器研究機構(茨城県)の吉岡正和名誉教授(高エネルギー物理学)の研究グループが提唱している。ILCを核にして持続可能なエネルギー社会の構築を目指す。
 ILCの実験施設を稼働させるには、ピーク時で117メガワット、年間7億キロワット時という膨大な電力が必要。消費した電力は全て熱エネルギーに置き換わって保存されるのがILC実験の特徴だ。
 熱エネルギーを再び電力に変換することも可能だが、変換効率が極めて低いため、従来の加速器研究施設では、排熱を冷却して空気中に放出していた。これらの排熱をそのまま熱エネルギーとして利用するのが「グリーンILC」構想だ。
 ILCで電力から置き換わった熱エネルギーは60〜200度と低温で、利用価値は低いとみられてきた。
 吉岡氏は、低温熱を自在に吸収したり排出したりできる蓄熱材「ハスクレイ」に着目。蓄熱したハスクレイをトラックなどで輸送する「熱エネルギーの宅配便」を考案した。
 ハスクレイは一般的な都市ガスの約13倍に相当する高密度熱量を蓄熱可能で、吉岡氏は「住宅などの暖房や給湯、農作物のハウス栽培、工場の熱源とあらゆる場面で活用できる」と説明する。
 グリーンILC構想は、電力供給の手法も検討。再生可能エネルギーの中から吉岡氏が注目するのは木質バイオマス発電だ。森林の樹木を伐採して発電燃料とするのではなく、地域の製材事業で排出される廃材を燃料とするよう提案した。
 研究棟、研究者住宅、その他のILC関連施設を木造建築にすれば、廃材をバイオマス発電の燃料として利用できるという。発電施設から熱エネルギーを直接、ILCや周辺地域へ供給することもできる。
 吉岡氏は「岩手の森林面積は約118万ヘクタール。豊富な地域資源を、まずは建築資材として活用することから考え、エネルギーや経済が循環するシステムを構築すべきだ」と訴える。


◎研究棟木造化経済効果1.64倍

 「グリーンILC」を提唱する吉岡正和・高エネルギー加速器研究機構名誉教授は、国際リニアコライダー(ILC)の研究棟を木造で建てた場合の地域経済効果を24億3970万円と試算した。鉄骨で建てた場合(14億8534万円)の1.64倍になる。
 2001年に本格利用が始まったスイス・チューリヒの放射光施設「スイスライトソース」は木造平屋の研究棟を採用。「集成材の開発が進み、大規模構造物の建造が可能になった。研究施設の木造化は世界的潮流」と強調する。
 吉岡氏は、ILC実験棟を延べ床面積約5975平方メートルの平屋と想定し、木造と鉄骨で生産誘発額を比較した。
 岩手県内で調達できるアカマツの集成材を使うと、鉄骨の場合より直接波及効果が大きくなるという。運搬や加工、設計といった県内関連産業への間接波及効果も木造の方が上だった。
 一方、建設費は木造の17億9360万円に対し、鉄骨は21億4365万円。木造の研究棟なら整備費も節減できるという。


2018年10月31日水曜日


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