宮城のニュース

<石巻・のぞみ野 ゼロからの出発>災害住宅の孤立化懸念

住民同士の交流を深めた芋煮会。近所付き合いの醸成を図る

 東日本大震災の被災地で最大規模となる集団移転団地「のぞみ野」が石巻市新蛇田地区に整備された。2015年11月のまちびらきから丸3年。移り住んだ3231人(9月末現在)のコミュニティーづくりは始まったばかりだ。以前の地縁を失った居住者の孤立や孤独死が懸念される中、手探りで一歩ずつ進む復興まちづくりの現場を探った。(石巻総局・鈴木拓也)=4回続き

◎復興まちづくりは今(1)町内会設立

 「何人集まるか心配だったが、150人も参加してくれた」。のぞみ野第1町内会長の佐々木茂太郎さん(78)は、晴れやかな表情を浮かべた。

<見守り体制課題>
 10月14日に町内会が開いた一斉清掃と芋煮会。1月の町内会設立以来初の大型行事で、回覧板で2回周知した。「多くて100人」の予想が、おにぎり50個を買い足す盛況となった。
 のぞみ野地区では昨年6月〜今年6月、4地区で町内会開設が相次いだ。各町内会は夏祭りや月見会などを企画。コミュニティー形成がようやく本格化する。
 災害公営住宅は地区全体で22棟(計535戸)建てられた。高齢化率は39.36%(9月末現在)。市全体の32.0%(7月末現在)に比べ高く、見守り体制をどう築くかが課題だ。市地域協働課の佐藤由美課長は「災害公営住宅の孤独死は阪神大震災の教訓だ」と危機感を抱く。
 同課は自治組織設立に当たり、災害公営住宅と一戸建てを混在させて四つの町内会をつくるたたき台を作成。比較的若い世代が暮らす一戸建ての住民が災害公営住宅を支える地域づくりを描いた。

<議論まとまらず>
 たたき台は16年7月に住民に提示され、住民同士の議論を経て4地区の区割りが決定した。地区ごとに顔合わせ会を開いた後、交流を深める地区会、自治会設立に向けた準備会と徐々にステージを移行させた。
 3地区は災害公営住宅と一戸建てが一緒の町内会を発足させたが、残る1地区は災害公営住宅8棟のうち3棟が、アンケート結果を踏まえて独立した町内会を希望。5棟と一戸建ての混合町内会は5月に発足したものの、3棟は議論がまとまらず10月22日に設立準備会を解散した。
 1地区だけ町内会づくりが難航したのは想定世帯数が403戸で、245〜323世帯の他3地区より大きかったことなどが要因。災害公営住宅ごとに既にコミュニティーが築かれていた点も影響した。
 将来を見越すと、町内会を組織しなかった災害公営住宅は孤立の恐れがある。
 のぞみ野地区のコミュニティーについて、福祉の観点で市に助言してきた東北学院大地域共生推進機構の本間照雄特任教授(福祉社会学)は「災害公営住宅は建物の構造上、自己完結能力が高く、人と関わらなくても生活できる。人が意図的にクロスしなければ家にこもってしまう」と警鐘を鳴らす。

[メモ]のぞみ野(新蛇田)地区は被災市街地復興土地区画整理事業で造成した。面積46.5ヘクタール。計画戸数は宅地730区画、災害公営住宅535戸で、計画人口は3300。住居を失った被災者や道路建設など復興事業に協力して立ち退いた市民らが居住する。三陸自動車道を挟んで南に造成されたあゆみ野(新蛇田南)地区も被災者の集団移転先で、27.4ヘクタールに1990人の居住を計画する。


2018年11月02日金曜日


先頭に戻る