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<廃炉の課題 女川原発1号機>(下)経済合理性/費用増大 再稼働焦る

東北電が2号機の再稼働を目指す女川原発。並行して1号機の廃炉作業が始まる

 東北電力が女川原発1号機(宮城県女川町、石巻市)の廃炉を決めた。来年度上期にも原子力規制委員会に廃止措置計画を申請する。解体作業は30〜40年かかる長い道のりだ。東北電が初めて直面する廃炉の課題や影響を探る。(報道部・高橋鉄男、石巻総局・氏家清志)

 廃炉には多額の費用がかかる。東北電力は女川原発1号機(宮城県女川町、石巻市)の廃炉費用を2017年度末時点で432億円と想定していた。
 電力会社は廃炉に必要な費用を解体引当金として積み立てている。東北電は既に想定費用の約7割に当たる296億円を積み上げ、残りは今後6年で引き当てる。
 東北電の原発4基分の費用は以前、毎月の電気料金に上乗せされていた。標準家庭(月の電力使用量260キロワット時)の場合、月12円程度を支払っていたことになる。
 東北電は、東日本大震災と東京電力福島第1原発事故の影響を踏まえて13年9月に電気料金を引き上げた際、再稼働が見通せない女川1〜3号機の解体引当金を原価算定に織り込めなかった。このため現在は収益から捻出している。
 担当者は「原発が再稼働すれば火力発電の燃料費などを削減でき、その分を未引当金に積み上げる」と説明する。ただ廃炉に伴い生じる放射性廃棄物の処分などで、費用が想定より膨らむ可能性がある。

<新電力が台頭>
 震災で傷ついた東北電の経営基盤は回復途上。廃炉以外にも再建に向けた不確定要素がある。
 電力小売りの全面自由化から2年半が過ぎ、東北電管内でも企業や家庭が料金などを比べて事業者を選ぶ機運が広がっている。電力・ガス取引監視等委員会の7月のまとめによると、東北6県と新潟県の販売電力量全体に占める新規参入事業者(新電力)の比率は13.7%に上った。
 中でも企業向けの高圧(契約電力50キロワット以上、2000キロワット未満)は新電力の比率が24.5%に達した。
 東北に本社を置く新電力の幹部は「東北電の牙城は崩れている」と自信を見せ、こう言い切った。「販売電力の競争が激化する中、利益を生まない廃炉は足かせになる」
 競争に勝ち抜くため、東北電が是が非でも実現したいのが女川2号機の再稼働だ。原田宏哉社長は1号機の廃炉を表明した10月25日の記者会見で「2号機に経営資源を集中して早期の再稼働を目指す」と強調。再稼働を競争に生かしたいという焦りをにじませた。

<安全対策続く>
 2号機は13年12月、原子力規制委員会への審査を申請したが、事故後の規制強化で追加の安全対策工事が相次ぐ。今年10月には規制委から「論理展開が十分検討されていない」と追加資料の提出を求められ、19年1月に審査を終えたいとする東北電の方針も不透明感が漂う。
 東通原発(青森県東通村)は審査が序盤でつまずき、女川3号機は審査の申請時期も見通せない。
 審査の長期化、安全対策費の増大、そして廃炉が現実となり、原発の経済合理性は揺らいでいる。

[解体引当金]電力各社が1988年度から廃炉に備えて毎年計上する。省令改正で2018年度以降、運転開始から50年だった引当期間が原則40年に短縮された。原発の後処理費には使用済み核燃料の再処理費、最終処分費もある。


2018年11月04日日曜日


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