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<東北の本棚>執念の調査で真相解明

◎ニホンオオカミの最後 遠藤公男 著

 ニホンオオカミは謎に包まれた動物だ。生きた姿の写真は1枚もなく、剥製標本は国内に3体あるだけ。明治38(1905)年に奈良県で捕獲されたのを最後に滅びたとされる。
 一関市生まれの著者は、子どもの頃からオオカミに強くひかれていた。故郷のオオカミはいつ、なぜ滅びたのか。本書は、著者の長年にわたるオオカミの調査と最新の成果を紹介する。
 著者はまずオオカミの痕跡を追う。30年ほど前、北上高地にオオカミで造った酒を秘蔵する家があると聞き訪ね歩く。明治生まれの老女が縁の下に隠していたことが分かり、著者も味わう。酒の中には前脚の骨の一部が残っていた。
 国内の剥製は、いずれもニホンオオカミの野生を伝える物ではなかった。海外に残る2体のうち、オランダの博物館が収蔵するシーボルトが幕末に持ち出した剥製も同様。ただ、ロンドンの大英自然史博物館の非公開の剥製は、オオカミの特徴を示す立派な標本だった。「ロンドンでようやく本物に出合えた」と記す。
 江戸時代の盛岡藩内のオオカミの数や被害状況なども文献を基に詳細に分析。シカとオオカミのバランスの変化や、特産の馬などを守るために捕獲がどう行われたかも解き明かす。明治になるとオオカミに次々と懸賞金がかけられ捕獲が加速したこと、明治19年の懸賞金が、ほぼとどめを刺すことにつながったことなどを紹介。同40年、絶滅したとされる2年後に岩手県内で捕獲した記録があったことも突き止める。
 そして著者が20年ほど前に奥州市の古老からもらった牙の根付けが、2018年5月、DNA鑑定でオオカミの牙と確認されたことも明かす。執念のオオカミ研究が実った瞬間だった。
 オオカミは恐ろしいものだったが、一方では生態系の頂点に立つ自然の守り神だったとの視点が全編を貫いている。著者は1933年生まれ。宮古市在住のノンフィクション作家。
 山と渓谷社03(6744)1919=1728円。


2018年11月04日日曜日


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