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<石巻・のぞみ野 ゼロからの出発>住民同士の支え合い鍵

渡辺復興相に生活支援の充実を求める増田さん(中央)

 東日本大震災の被災地で最大規模となる集団移転団地「のぞみ野」が宮城県石巻市新蛇田地区に整備された。2015年11月のまちびらきから丸3年。移り住んだ3231人(9月末現在)のコミュニティーづくりは始まったばかりだ。以前の地縁を失った居住者の孤立や孤独死が懸念される中、手探りで一歩ずつ進む復興まちづくりの現場を探った。(石巻総局・鈴木拓也)=4回続き

◎復興まちづくりは今(4完)孤独死リスク

 「隣の様子がおかしい」
 石巻市のぞみ野第2町内会長の増田敬さん(67)の元に今夏、災害公営住宅の住民から連絡があった。
 80代女性の1人暮らし。駆け付けるとぐったりした様子で、食事を4日間取っていなかった。薬の服用も忘れ、期限切れの食料が冷蔵庫に残っていた。
 別の80代女性は猛暑にもかかわらず扇風機を使用せず、物置に2台あったことも忘れていた。エアコンはない。テレビのリモコン操作や風呂の自動の湯量調節も自分でできなかった。

<生活能力に衰え>
 大事には至らなかったものの、東日本大震災から8年目に入り、災害公営住宅では生活能力が衰えていく高齢者が少なくない。
 他の災害公営住宅でも室内にごみをため込んだり、腰を痛めて布団から3日も起き上がれなかったりするケースが発生。介護などが必要な家庭は専門的な支援が受けられるが、日常的な見守りは共益費を管理する「団地会」の役員らがごみ捨てを手伝い、心配な家庭は定期的に訪ねるなどしているのが実情だ。
 単身高齢者の生活リスクは、孤独死リスクと直結する。増田さんは「1人で生活が成り立たない人が、既に出ている」と危機感を募らせる。

<正確な数は不明>
 孤独死の実態把握は難しい。市住宅管理課の担当者は「孤独死として報道で取り上げられた事例は2015年に2件あった」と説明する一方、「明確な定義がない」として正式な集計はしていない。
 災害公営住宅の管理を委託する宮城県住宅供給公社が鍵を開けて安否確認し、死亡していたケースも類似事案と考えられるが、全体の数は不明。少なくとも今年4月以降に1件あったという。
 「今後は一人一人の個別支援が大事。復興期間が終わってもそういう活動に関心を持ってほしい」。増田さんは10月22日、町内会を視察に訪れた渡辺博道復興相に意を決して申し出た。
 家族の誰かが欠けたら生活に窮する家庭や単身高齢者の生活リスクを挙げ、入居者の同意を得た上で緊急時に鍵を開けられるシステムの構築も要望。増田さんは「復興相も快く応じてくれた」と期待する。
 市社会福祉協議会の地域福祉コーディネーター谷祐輔さん(36)は「仮設住宅に比べて支援員やボランティアが減っており、孤独死を防ぐには地域の支え合いが大切だ」と指摘。「のぞみ野地区は既存の町内会よりも見守り活動をしている。一歩でも地域が前に進めるようにサポートしたい」と語る。
(石巻総局・鈴木拓也)


2018年11月05日月曜日


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