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<ホップ薫るまちの挑戦>先進地に学び高度化

青々としたホップ畑を満喫するビアツーリズム参加者=6月、遠野市青笹町

 岩手県遠野市が栽培面積日本一を誇るホップを活用したまちづくり「ビールの里構想」に挑んでいる。生産農家は高齢化が進み、ビールの国内消費は低迷。取り巻く厳しい現実に、生産者や関係企業、そして若者たちが手を携えて立ち向かう。産地を守り抜こうと奮闘する人々を追った。(釜石支局・東野滋)

◎遠野・ビールの里構想(2)変革

 「変革」の旗手に、会場のホップ生産者や醸造家の視線が注がれた。
 東京で10月にあった国産ホップ振興策を話し合う「ホップサミット」。遠野市の農業法人「BEER EXPERIENCE(ビア・エクスペリエンス)」の社長吉田敦史さん(45)が、基調講演に立った。
 2月にビア社を設立し、キリンと農林中央金庫から計2億5000万円の出資を受けた。国の補助金も得て8ヘクタールのホップ畑を整備し、新品種「MURAKAMI SEVEN(ムラカミセブン)」を栽培する。
 目指すのはホップ生産の高度化だ。畑の大規模化で作業効率を高め、日本初となるドイツ製機械の導入で省力化を追求。新規就農者も受け入れる。
 吉田さんは2017年にドイツを視察し、世界最先端のホップ生産を目の当たりにした。遠野では普通の手作業が、ホップ博物館では何十年も前の風景として白黒写真で紹介されていた。
 「遠野全体の栽培面積に相当する25ヘクタールを、ドイツでは家族3人で生産している。後継者確保を見据えた機械化がホップ買い取りの条件になっているほどだ」
 対して遠野は小さな畑が点在し、家族単位の生産体制にも限界が見えつつあった。クラフトビール人気で国産ホップの需要が高まっている機を捉え、産地存続に向けた挑戦を決意した。
 畑の整備と機械購入の費用は計1億7600万円に上る。吉田さんは「初期投資が大きくてもホップを主軸に食っていける農業モデルをつくる。何より、息子たちに『いい仕事だから継げよ』と言えるようにしたい」と強調する。
 ホップ畑や醸造所を観光資源に活用する「ビアツーリズム」も事業の柱だ。本年度は自治体や企業の視察も含めて約400人を呼び込んだ。担当社員の美浦純子さん(34)は「ビールやホップをきっかけに、遠野の歴史や文化にも触れてもらいたい」と意気込む。
 かつてキリンビールは需要減から遠野産ホップの「減反」を進めた。今回、ビア社の増反に協力するのは国産ホップの生産量が減少する中、安定調達を図る上で遠野への期待が大きいことにほかならない。
 遠野ホップ農協組合長の佐々木悦男さん(76)は「『ビールの里』づくりは今後もホップ産地であり続けることが大前提だ。新たな取り組みをぜひ成功させてほしい」と話す。


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2018年11月07日水曜日


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