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<東日本大震災>「思い出の品返却」復調 被災自治体事業を強化

陸前高田市が開設したブースで震災前の写真を探す人たち=9月23日、仙台市青葉区

 東日本大震災から7年半以上が経過した被災自治体で、がれきの中から回収した写真などの「思い出の品返却事業」を強化する動きが続いている。暮らしの再建に時間を必要とする被災者の実情に対応した。思い出の品が交流の場づくりに寄与するなど新たな役割も見え始めた。(大船渡支局・坂井直人)

<2市合同で開催>
 沿岸各地の出身者や避難者の多い仙台市で9月下旬、陸前高田、気仙沼両市が返却会を開いた。物品が隣接自治体に漂着している可能性を考慮した初の2市合同開催だ。
 初めて返却会を訪れた人も多く、陸前高田市の実家が津波で流失した菊地喜久代さん(81)=仙台市泉区=もその一人。データの中から犠牲になった義姉の写真を発見し「1枚でもあってよかった」と喜んだ。
 被災市町村は震災後、ボランティアやNPO法人の協力を得て写真や物品を洗浄し、リストを作成するなどして返還に取り組んできた。だが、時間の経過とともに返却数は徐々に減少。予算や人員の確保も難しくなり、事業の終了や縮小が各地で相次いだ。
 陸前高田市も昨年11月にいったん返却事業を終了。予算確保にめどが付いた今年9月に一般社団法人「三陸アーカイブ減災センター」(釜石市)と再契約で事業を委託した。

<ニーズまだある>
 このほか仙台市は11〜12月に沿岸地区3カ所で返却会を開催する予定だ。宮城県南三陸町は11月下旬、転出した元町民の多い登米市に出向いて閲覧会を開く。
 南三陸町の担当者は「ようやく自宅を再建し、思い出の品を捜す心の余裕が出て来た人もいるのではないか」と説明する。
 市庁舎に思い出の品検索用のパソコンを設置していた気仙沼市。昨年度の利用者は数人にとどまり、返却実績はゼロだった。
 民間団体への事業委託を復活させた本年度は、災害公営住宅や仮設住宅、仙台での出張返却会に約100人が来場し、写真計約90枚を返還できた。
 事業を再受託した団体は「被災者支援の催しが少なくなる中、思い出の品の閲覧が、新たな交流の場となっている」と意義を強調する。
 減災センターの秋山真理代表理事は「潜在的なニーズはまだある」と強調。「通常の福祉施策や地域活性化の取り組み、まちづくり活動に思い出の品を活用したり、自治体が連携して返却会を企画したりすれば、負担を減らして事業を継続できるのではないだろうか」と提案する。

[思い出の品返却事業]東日本大震災では、遺失物法の保管期間(3カ月)を経過した後も被災自治体が回収物を管理して返却に努めた。環境省は震災を教訓として2014年に災害廃棄物対策指針を策定し、市町村による取り扱いルール検討の必要性を明記。今年3月の改訂では、一定期間を過ぎた写真や物品は市町村判断で処分すると追記した。


2018年11月07日水曜日


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