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<宮城県北汚染廃 それぞれの選択>(上)焼却/訴訟、他圏域に影響も

汚染牧草が入る黄色い袋を投入する作業員。ピットが狭く、一般ごみと均一に混ぜるため、小分けにしている=10月15日、大崎市古川の中央クリーンセンター

 東京電力福島第1原発事故の放射性物質で生じた国の基準(1キログラム当たり8000ベクレル)以下の汚染廃棄物の処理に向け、試験焼却などの取り組みが宮城県内で進んでいる。処理方法はさまざまで、県北ではメインの処理が「焼却」「すき込み」「堆肥化」と分かれる。現状と課題を報告する。

 大崎市を含む大崎圏域では、10月15日に試験焼却が始まった。安全性の確認が目的で、仙南、黒川両圏域、石巻市に続き4カ所目。県内で焼却予定の地域全てが試験焼却に着手した。
 焼却処理は、基準以下の廃棄物を一般廃棄物扱いにした原発事故の特別措置法を根拠とする。大量の一般ごみと混ぜて焼くのは、生じる焼却灰の放射性セシウム濃度を抑えるためだ。

<市長選で「信任」>
 半年の試験焼却では、大崎地域広域行政事務組合の3焼却施設(同市古川、岩出山、涌谷町)でそれぞれ最大日量1トンの汚染牧草を混焼し、焼却灰の放射性セシウム濃度を1200ベクレル以下にする。1回目の焼却は終了し、組合によると、空間線量の大きな変化などは見られないという。
 大量の廃棄物の早期処理が必要だとして、組合管理者の伊藤康志市長は当初から県の一斉焼却方針に同調。昨夏の県市町村長会議で圏域ごとに処理方法を決めることになっても、焼却方針を堅持した。今春の市長選で4選後は「争点の一つとなり、信任を得た」として焼却施設や同市三本木の最終処分場の周辺住民らが反対する中、試験焼却の準備を進めさせてきた。
 市内の基準以下の汚染廃棄物は6000トン余りで、県内の6分の1。市はうち400ベクレル以上の約2900トンを焼却に回す方針。保管地域では400ベクレル以下の一部すき込みが始まるが、「目の前から片付けてほしいというのが願い」と焼却処理に期待する声がある。
 試験焼却開始日、伊藤市長は「市民から早期解決を求められてきた。安全に、安定的に処理する方法として混焼を中心とすることを選択した」と述べ、安全確保を前提に試験焼却を進める考えを改めて示した。

<対決姿勢崩さず>
 一方、放射能汚染が拡散するとして試験焼却に反対する住民らは、関連予算の差し止めを求める住民訴訟を仙台地裁に起こした。
 原告団団長で岩出山の焼却施設近くの住民組織「上宮協栄会」会長の阿部忠悦さん(79)は「放射性セシウムが99.99%外部放出されないという国などの説明は信じられない」と汚染廃棄物の隔離保管を主張し、対決姿勢を崩さない。
 原告団に加わる市民団体は、試験焼却開始日から放射性セシウムの独自測定にも乗り出している。
 住民訴訟では、原告側が「汚染廃棄物の持ち込みは約束違反」と主張。組合と施設周辺の住民組織などとの間で交わされた覚書や申し合わせの「効力」が焦点になりそうだ。
 本焼却した場合、焼却期間は5年以上かかる見通し。原告側は試験焼却の中止を求める仮処分申請も検討中で、訴訟の行方は大崎圏域のみならず、他圏域での焼却処理に影響を与える要素を含んでいる。
(大崎総局・大場隆由、小牛田支局・山並太郎)

[メモ]国の基準以下の汚染廃棄物の総量は県内で約3万6000トン。県によると、35市町村のうち、現在、汚染廃棄物を保管していないのは仙台市や塩釜市、多賀城市など7市町。保管する市町村のうち、仙南(白石市、角田市、蔵王町、川崎町、七ケ宿町)、黒川(大和町、大郷町、大衡村)、石巻(石巻市)、大崎(大崎市、涌谷町、美里町)の4圏域12市町村が焼却方針を示し、石巻市は12日から本焼却に移る。4圏域にある他の8市町と、亘理名取、登米、栗原、気仙沼の4圏域8市町の計16市町は、焼却以外の処理方法を検討している。


2018年11月08日木曜日


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