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<ホップ薫るまちの挑戦>街に、企業に、成果着々

夜になってもにぎわいが続いた遠野ホップ収穫祭=8月25日午後7時15分ごろ

 岩手県遠野市が栽培面積日本一を誇るホップを活用したまちづくり「ビールの里構想」に挑んでいる。生産農家は高齢化が進み、ビールの国内消費は低迷。取り巻く厳しい現実に、生産者や関係企業、そして若者たちが手を携えて立ち向かう。産地を守り抜こうと奮闘する人々を追った。
(釜石支局・東野滋)

◎遠野・ビールの里構想(3)活気

 ビールが飛ぶように売れていく。日が暮れても熱気は衰えない。遠野市中心部で8月25、26日にあった「遠野ホップ収穫祭」だ。4回目となる今年は市内外から7500人を集め、過去最高のにぎわいを見せた。
 「遠野麦酒ZUMONA(ズモナ)」を製造する地元の上閉伊酒造もブースを構えた。2015年に始動した「ビールの里構想」への参画を、社長の新里佳子さん(50)は「大きな転機だった」と振り返る。
 競合するキリンから生の遠野産ホップの供給を受けられるようになり、新商品を次々に開発。16年から、国内最大級のビールの祭典「横浜オクトーバーフェスト」に出店を続けている。
 10万人以上が訪れる大舞台に刺激を受けたのが醸造担当の坪井大亮さん(38)だ。「お客さんにビールを残されると悔しい。毎回改善点を持ち帰り、その後の製造に生かしている」
 成果は9月、国内外から193の醸造所が参加したビールの国際コンテストで表れた。上閉伊酒造のゴールデンピルスナーは部門別の金賞を受賞。坪井さんは「励みになる。現状に満足することなく、遠野のホップでいいビールを造り続けたい」と語る。
 4年目に入ったビールの里づくり。遠野の街が、企業が少しずつ活気づいてきた。
 市中心部では地域おこし協力隊員の3人が「遠野醸造」を起業し、5月に空き店舗を改装して醸造所併設のパブを始めた。常時数種類のオリジナルビールを販売。売り上げは当初の想定を上回り、市民の新しい社交場として定着している。
 第三セクター遠野ふるさと公社も、オクトーバーフェストへの出店を通じて独自商品のホップ入りソーセージの販路開拓に成功した。
 市六次産業室副主幹の菅原康さん(49)は「『ビールの里』は観光や農業の振興、6次産業化、市街地活性化など、あらゆる街づくりの要素を包含するキーワードだ。企業も遠野の活性化に協力しつつ利益を得られる」と強調する。
 市街地を迂回(うかい)する自動車道の全面開通が迫る中、1789年創業の老舗を率いる新里さんは誓う。
 「ビールの里を実現し、観光客の素通りを食い止めたい。長年商売をさせてもらった遠野の街全体を盛り上げるため、その一翼を担い続ける」


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2018年11月08日木曜日


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