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<ホップ薫るまちの挑戦>地域の誇り 次世代へ

栽培したホップを収穫する児童たち=9月、遠野市の土淵小

 岩手県遠野市が栽培面積日本一を誇るホップを活用したまちづくり「ビールの里構想」に挑んでいる。生産農家は高齢化が進み、ビールの国内消費は低迷。取り巻く厳しい現実に、生産者や関係企業、そして若者たちが手を携えて立ち向かう。産地を守り抜こうと奮闘する人々を追った。

◎遠野・ビールの里構想(4完)未来

 ホップを活用したまちづくり「ビールの里構想」を掲げる遠野市で、子どもたちにホップについての「学び」が広がっている。
 土淵小(児童90人)は2016年度から「ホップ学習」に取り組む。栽培畑や加工場を見学し、つるでリースを作るなど多様な体験でホップに触れる。
 今年の修学旅行では、初めてキリンビール仙台工場(仙台市宮城野区)を訪問。ビールの製造過程を見学した6年生21人は、遠野産ホップが重要な原料になることを実感した。
 着任と同時にホップ学習を始めた校長の阿部真由子さん(56)は「ホップを教材に地元を見詰め直し、愛着を持たせるのが狙い。古里を支える仕事に就くことを、将来の選択肢の一つにしてほしい」と願う。
 遠野緑峰高(生徒151人)の草花研究班は、つるを原料にした「ホップ和紙」作りを研究する。14年度に製造に成功し、既に全国ユース環境活動発表大会などで6度の日本一に輝いた。
 産業化してホップ農家の収入増につなげるのが生徒たちの目標だ。本年度は和紙を使って製作したアクセサリーを販売。3年の山蔭仁哉(じんや)さん(17)は「ホップは遠野の大事な作物。少しでも農家を支えたい」と話す。
 遠野伝統のホップ生産を、いかにして次の世代へ引き継ぐか。ビールの里構想も次のステージへと踏み出した。
 地域おこし協力隊員の田村淳一さん(31)は10月、市内に新会社「BrewGood(ブリューグッド)」を設立した。今後の構想に必要な具体的事業を検討して人材を確保するといったマネジメント機能を担う。
 市内3カ所目の醸造所開設、ゲストハウス整備、お土産やおつまみの開発…。描く青写真をしっかりとした形にするため、地元協議会を設置する。行政や大手企業が主導してきたビールの里づくりに幅広く民間の力を取り込む。
 認知度向上を目指して情報発信も強化。現状では協力隊員ら外部の人材の活躍が目を引くが、さらなる盛り上がりには市民の共感と応援が欠かせない。
 田村さんは「『ビールの里』に多くの人が来ることで遠野物語やどぶろく、農家民泊など他の地域資源も発信できる。取り組みを加速させ、3年後には実現したい」と決意を示す。
 先人たちが半世紀をかけて築き上げたホップ薫るまち。気概と誇りを胸に未来への挑戦を続ける。
(釜石支局・東野滋)


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2018年11月09日金曜日


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