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<宮城県北汚染廃 それぞれの選択>(下)堆肥化/施設候補地選び難航

栗原市が建てた実験施設。牧草と微生物資材を混ぜ、定期的に重機でかき回し堆肥にする=2016年5月、栗原市金成

 東京電力福島第1原発事故で生じた国の基準(1キログラム当たり8000ベクレル)以下の汚染廃棄物を巡り、栗原市は全国でも例がない堆肥化処理を目指す。国や県が勧める焼却処理に、放射性物質の拡散などを不安視する声が根強いからだ。
 対象は、市が保管する約3550トンの基準以下廃棄物の7割を占める汚染牧草約2550トン。鉄骨テント型の建屋内で、大量の微生物資材を混ぜて高温発酵させて堆肥にする。資材投入による希釈で堆肥の放射性物質濃度は、国が土壌還元可能とする400ベクレルを下回る300ベクレル以下になると独自に検証を重ねた。

<全量消費に4年>
 できた堆肥は協力する畜産農家らが利用する。膨大な資材の混入で、堆肥の重さは元の牧草の約3.5倍になり、市は全量消費に4年を要すると見込む。
 市が堆肥化にかじを切ったのは、2014年10月。保管自治体が処理方法を思案する中、汚染廃棄物から低濃度の堆肥を製造した東大大学院農学生命科学研究科付属牧場(茨城県)の研究実績に着目した。
 東大などの協力を得て16年5月に実証実験に着手。製造した堆肥で育てた植物に放射性物質の移行はなく、製造施設周辺への影響も見られないとの結果を得て、17年には堆肥化が有用と結論付けた。
 だが、肝心の製造施設の整備が宙に浮いている。
 市は今年6月、市議会で栗駒地区の市営上田山牧野を候補地にすると表明。突然の方針に、地域から反発の声が上がった。
 住民説明会では「候補地は上流の水源地。放射性物質が地下水に流れる」「農産物の風評被害につながる」との反対意見が噴出。市は高温発酵で堆肥は乾燥し、水がほぼ出ないことや風評被害対策を説明したが、反対の声はやまなかった。
 建設反対を訴える住民団体が結成され、市に意見書を提出。千葉健司市長が「無理に押し切らない。立ち止まって考える」と回答し、候補地の見直しを余儀なくされた。

<配慮足りぬ説明>
 牧野周辺のある住民は「堆肥化自体は否定しない。市から事前に丁寧な説明があれば結果が違っていた可能性もあった。市は住民感情を読み誤った」と話す。
 建設候補地が決まらない一方で、事業への追い風はある。市が畜産農家らに製造堆肥の散布可能面積を尋ねた意向調査で、受け入れ面積の合計が必要分(約180ヘクタール)の約9割に当たる約160ヘクタールに上った。市は不足分を市有地で補う方針で、事業に必要な面積は確保できる見通しだ。
 堆肥化に理解を示す市議の一人は「市内は総論賛成、各論反対といったところ。ただ、『住民が反対すれば事業が一時停止する』との前例ができた。今後の市の対応は難しい」と憂う。
 市幹部は「候補地の周辺住民への説明に配慮が足りなかった。安全な施設との確証は得ている。何とか進めたい」と話すが、スタート位置に付けずにいる。
(栗原支局・土屋聡史、若柳支局・古関一雄)

[メ モ]栗原市は17年、処理手法を比較する調査を実施。報告書によると、減容効果が高いのは焼却で、放射性物質を含む灰が吸着したフィルターの除去などに課題が残るとした。すき込みは大規模施設が要らないが、400ベクレル以上の処理が制限されると指摘。乾燥や圧縮、集約保管は減容効果が見込めず、後で最終処分が必要になる点を短所とした。堆肥化は、放射性物質の影響が外部に及びにくいとして「性能および安全性が高い」と結論付けた。焼却に反対する市民団体からは、放射性セシウムを気化させない低温焼却による減容後に隔離保管する案も示されている。


2018年11月10日土曜日


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