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<むすび塾>来月、伊勢で開催 観光名所・津波に備え

むすび塾会場となる二見浦の海岸線。手前は夫婦岩(中日新聞社提供)

 東日本大震災後の防災・減災キャンペーン「いのちと地域を守る」に取り組む河北新報社は12月1日、中日新聞社(名古屋市)と共催し、三重県伊勢市の二見浦(ふたみがうら)で巡回ワークショップ「むすび塾」を開く。伊勢神宮にも近い伝統の景勝地を舞台に、南海トラフ巨大地震を想定した模擬訓練を行い、旅館関係者らが宿泊客や観光客の誘導など津波への備えを確認する。

 訓練はマグニチュード9級の地震により、20分後に津波が来ると想定。旅館のスタッフやまちづくり団体の住民などが、海岸付近にいる宿泊客や観光客を避難場所である裏山の高台まで誘導する訓練に取り組む。
 震災の語り部として、岩手県大槌町で営むホテルが3階まで浸水した男性経営者、両親が津波で犠牲になった宮城県女川町の宿泊施設の女性経営者、海岸そばにあった病院で働く母親が津波にのまれ行方不明になった石巻市出身の女子大学生の3人が参加。震災の体験と教訓に基づいて、宿泊客や従業員の命を守るために必要な備えを語り合う。
 前日の11月30日は、語り部3人が一般市民に震災体験を伝え、備えを呼び掛ける「東日本大震災を忘れない〜被災体験を聞く会」を伊勢市の複合施設で開く。
 河北新報社は震災の教訓伝承と防災啓発の発信を目的に、2014年から全国各地の地方紙と共催でむすび塾を展開している。共催むすび塾は今回で通算13回目、中日新聞社との共催は16年11月の愛知県碧南市に次いで2回目。

◎参拝客、海沿いの旅館街/高台への誘導 課題探る

 伊勢市は三重県南東部にあり、年間約900万人が参拝する伊勢神宮で知られる。むすび塾を開く二見浦は伊勢湾に面する約4キロの海岸で、参拝客や海水浴客が多数訪れる観光名所。南海トラフ巨大地震の津波対策が急務だが、旅館組合や地域の備えは始まったばかりで、東日本大震災の知見に期待が集まる。
 二見浦は江戸時代に10軒超の茶屋が開かれていた記録があり、明治に入って海岸のすぐそばに旅館街ができた。現在は二見町茶屋地区に約300世帯、約750人が暮らし、ホテルや旅館が11軒並ぶ。
 海沿いにある二見興玉(ふたみおきたま)神社の夫婦岩が名所として知られ、年間約190万人が訪れる。神社では1792(寛政4)年の津波を伝える神事「御中施(ごじゅうせ)」も毎年6月に開催。神事では「津波は急に来る。見るな、待つな」の意味にかけてキュウリや海藻のミルなどを小舟に載せて海に流している。
 南海トラフを震源とする地震は昭和南海地震(1946年)から70年以上が経過。大地震が起きた場合、人口約13万の伊勢市では最大7000人の犠牲が想定されている。茶屋地区の緊急避難所は音無山、二見公民館など5か所が指定されるが、まとまった形で避難誘導訓練に取り組んだことはこれまでなかった。
 二見まちづくりの会会長の北岡常正さん(71)は「地域を元気にしようと活動しているが、観光客を誘導する訓練をしたことがなく、むすび塾の訓練はいい機会になる。旅行者を守ることも、地域にとって大事なことだ」と語る。
 むすび塾を共催する中日新聞社三重総局の石川保典総局長は「むすび塾は被災者の方々の体験をじかに聞くことで、備えへの意識を高め、いざという時の教訓を共有するためにも大きな意義がある」と期待する。


2018年11月10日土曜日


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