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「農福連携」山形県が強化 農協OB橋渡し、成果着々

山形市内の里芋畑で収穫作業をする施設利用者たち

 農業の労働力不足解消と障害者の就労機会確保の両立を目指し、山形県が本年度、「農福連携」の取り組みを強化している。農業の現場と福祉施設の橋渡し役を務める農協OBを採用。地道な活動が徐々に成果を挙げている。農作業は施設利用者の精神的な安定に効果があるとされ、関係者は就労先が広がることで、東北6県で最も低い障害者の平均工賃の底上げにつながることも期待している。(山形総局・吉川ルノ)

 10月中旬、山形市東部にある「さとう農園」の里芋畑で、通所施設「蔵王の恵農場」(山形市)の利用者10人が収穫作業を行った。
 農園の佐藤卓弥社長(44)は「無農薬栽培で手間がかかるため、慢性的に人手不足。個々にやれる作業を見極めながら進めているので、大いに助かっている」と満足そう。
 「蔵王の恵農場」の利用者は現在、近隣の農場6カ所で里芋のほか、トマトや啓翁桜の栽培に携わる。精神障害がある渡辺達也さん(27)は「売り物になると思うと神経を使うけど、屋外の作業は気持ちが良い」と笑顔で話す。
 県は4月、やまがた農協で長年、営農指導に携わってきた白井進一さん(64)を農福連携推進員として採用。農業、福祉の各担当部局で構成するプロジェクトチームに配置した。
 農業に興味はあっても、作付けから出荷まで単独で行うのは荷が重いと考える施設が多いことから、白井さんは具体的な作業工程を提案するよう心掛けた。サクランボ出荷用の箱作りや畑の草取り、肥料散布などの軽作業で、連携が実現する例が多いという。
 その結果、農作業に従事した施設利用者は10月時点で延べ1026人と、既に前年度1年間の759人を大きく上回った。
 一方、農作業には障害者の心身への好影響も期待されている。
 障害者の就労支援に当たるNPO法人日本セルプセンター(東京)が14年に行った調査では、農業活動を行う施設の57%が利用者の精神面に良い影響があったと回答したほか、身体機能でも改善がみられたとする施設も45%に上った。
 センターの太田衛常務理事は「自然の中で生き物を相手に体を動かすことで、癒やしや体が丈夫になるといった効果が出ている」と分析している。
 厚生労働省によると、県の障害者の平均工賃(2016年度)は月額1万1430円。都道府県別では大阪府に次いで2番目に低く、東北6県でも5位の青森県と2000円近くの差がある=表=。
 白井さんは「就労先が広がることで、工賃の向上にもつながるはず。成功事例を波及させ、農業、福祉それぞれの課題解決に役立てたい」と話している。
 県は28日、東北他県の取り組みや先進事例を報告する「農福連携セミナー」を山形市の霞城セントラルで開く。セミナーは一般の参加が可能で、県が障害者施設や農業者らへの来場を呼び掛けている。連絡先は県障がい福祉課023(630)3303。


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2018年11月10日土曜日


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