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<東北の本棚>比較文学の父 源流探る

◎島田〓二伝 小林信行 著

 東北帝大(現東北大)出身で「比較文学の父」と言われた島田〓二(1901〜93年)。その業績と、文学の素養の源流をたどる。膨大な読書量と豊富な人脈が、独自の文学の世界を切り開いた。
 生まれたのは東京・日本橋。江戸時代の武家屋敷がなお並び、尚武の気風が残る。島田は、日清、日露戦争の海戦で武功を立てた将兵に憧れる「海軍少年」だった。
 歴史書、和洋の詩歌文から海軍の軍艦表まで、あらゆる分野の本を読んだ。しかし読書が高じて極度の近視になり、海軍に入る夢は破れる。東京外国語学校(現東京外語大)では英語の勉強と読書に没頭、北原白秋や西條八十、フランスのマラルメの詩に傾倒した。あるいは詩人・日夏耿(こう)之介と交遊を深めた。卒業すると米沢高等工業学校(現山形大工学部)に赴任。しかし2年で退職し仙台へ、東北帝大法文学部に入学する。ここが人生の転機となった。
 東北帝大には、新進気鋭の教授陣が顔をそろえていた。美学の阿部次郎、ドイツ文学の小宮豊隆、哲学の高橋里美。阿部次郎の自宅を訪ねた時の印象を「学生に対しても、慈愛のこもった態度で応接された」と書き記す。英語・英文学の土居光知には、日本人と西洋人の自然観の対比など後の比較文学の手法を教授された。
 太平洋戦争前、台湾へ、台北帝大教授となる。戦後引き揚げ、やがて東大教授に迎えられる。「日本比較文学会」を設立したのが1948年だ。「ロシアにおける広瀬武夫」など話題作を発表、作品を通じて作家の司馬遼太郎とも親交を深めた。
 著者は1937年岩手県西和賀町生まれ。元聖心女子学院中・高等科教諭。
 ミネルヴァ書房075(581)5191=8640円。

[注]〓は「謹」の異体字


2018年11月11日日曜日


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