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<ILC>誘致動向への影響焦点 学術会議検討委きょう回答案

ILC誘致の妥当性を審議する日本学術会議の検討委=10月16日、東京・六本木の日本学術会議

 岩手、宮城両県にまたがる北上山地が建設候補地の超大型加速器「国際リニアコライダー(ILC)」の誘致に関し、文部科学省から審議要請を受けた日本学術会議の検討委員会は14日、同省への回答案を公表する。これまでの会合では巨額予算を中心に多くの課題が浮上し、慎重な検討が続く。政治の現場では自民党中心の推進派が、政府に年内に前向きな意思を示すよう求める。回答内容が誘致の動向にどんな影響を与えるかが焦点となる。

 学術会議は8月、検討委員会と技術検証分科会で審議を開始。加速器全長を31キロから20キロとし、本体建設費を削減する新計画案の妥当性を話し合ってきた。
 9月には検討委が論点まとめを公表。物質に質量を与える素粒子「ヒッグス粒子」を精査する研究目標は評価したが、「経済波及効果の算定が粗っぽい」「建設候補地に地域振興の過剰な期待を抱かせている」との指摘が並んだ。
 最大の課題は7355億〜8033億円と試算された総事業費の確保だ。
 欧米各国と分担するため日本の負担は半分程度と見込まれるが、検討委では「既存の科学技術予算では賄えない規模。他の学術分野からの支持も不明」と懸念が出た。財務省内も「額が大きすぎ、他分野にしわ寄せがいく」と慎重論が強い。
 建設候補地でも疑問の声が上がる。一関市の市民団体は9月、学術会議に「環境影響や地元負担の説明が不十分」とする意見書を提出。推進派が地元にメリットばかり伝えてきたことが一因で、学術界などが不安払拭(ふっしょく)に追われた。
 推進派は8月、自民党国会議員を軸とした連絡協議会を設立した。ILCを国家事業と位置付け、財源を科学技術予算の枠外で確保するよう政府に求める。代表の河村建夫元官房長官は「政治決断が必要だ。日本が意思表示しなければ中国などが手を挙げ、研究者が流出する」と強調する。
 産学官でつくる東北ILC推進協議会の西山英作事務局長は「国内初のプロジェクトだけに学術界の慎重姿勢や地元の不安も分かる。世界で日本が生き残るモデルで地方創生の新しい形。東北で実現する意義を地道に広げていく」と話す。
 学術会議は回答案を審議した上で、年内に文科省に正式に示す方針。政府判断に影響するとみられ、誘致の道筋に見通しが立つかどうか重要な局面となる。

◎「復興の力に」誘致実現要望 岩手知事ら

 岩手県の達増拓也知事と岩手、宮城両県議会の議員連盟は国際リニアコライダー(ILC)の北上山地への整備実現を目指し、永岡桂子文部科学副大臣に13日、政府として年内に誘致に前向きな姿勢を示すよう要望した。
 達増氏はILC実現を求める北海道東北地方知事会の決議文を永岡氏に手渡し「東日本大震災や北海道地震、各地の豪雨災害からの復興の力となる」と述べた。両県県議23人も同行し議連の要望書を提出した。
 達増氏は取材に「誘致を求める地域の広がりと地元の熱意を伝えた」と述べた。各書面は、渡辺博道復興相と自民党地方創生実行統合本部長の河村建夫元官房長官にも提出した。

◎超党派の議連「決断促そう」 東京で総会

 国際リニアコライダー(ILC)の国内誘致を目指す超党派の国会議員連盟の総会が13日、衆院議員会館であり、活動状況を報告した。
 会長の河村建夫元官房長官は「計画推進には財源確保や社会の理解の広がりが必要。民間の協力も得て、政府の決断を促そう」とあいさつ。塩谷立幹事長は欧米の政府高官や国会議員との協議を通し、政治レベルの国際連携を強化している現状を語った。
 産学官でつくる東北ILC推進協議会代表の高橋宏明東北経済連合会名誉会長も活動を紹介。建設候補地の北上山地への誘致について、「東北の産業を中長期的に活性化し、震災復興につながる」と強調した。


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2018年11月14日水曜日


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