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<核のごみ 漂流する処分策>幌延深地層研究センター 近づく実験期限

地下350メートルの坑道。核のごみの地層処分に向け、トンネルの奥で閉じ込め性能を確かめる試験が行われている=10月11日、幌延深地層研究センター
三つの建屋からそれぞれ地下深部に延びる立て坑がある

 東京電力福島第1原発事故後、原発が再稼働する一方で高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分に向けた動きは停滞したままだ。日本原子力研究開発機構(JAEA)の幌延深地層研究センター(北海道幌延町)は、核のごみを地中深く埋める「地層処分」(最終処分)の実験場。研究期限が近づく中、地元では予定通り終了を求める声と経済効果を期待して延長を求める声が交錯する。最終処分実施主体の原子力発電環境整備機構(NUMO)は、候補地となり得る地域を示した「科学的特性マップ」の住民説明会を各地で開催しPRに躍起だが、関心は総じて低い。「トイレのないマンション」から、いつ抜け出せるのか。(東京支社・瀬川元章)

◎地下350m閉じ込め性能試験「さらに深い所理想」

 国内最北端の稚内空港から南へ40キロ。2300人が暮らし、酪農が盛んな幌延町にJAEAの幌延深地層研究センターがある。
 西立て坑からエレベーターで降りて約4分。地下350メートル、水平に掘った8の字形の調査坑道(全長757メートル)に着いた。
 トンネルの掘削現場に似ている。海に近く、軟らかい堆積岩の地質。壁には1メートル間隔でアーチを支える鋼材が食い込む。塩気のある水があちこちで染み出し、道端の排水溝にたまる。
 湧水量は1日60トン。ぷくぷく浮かぶ気泡はメタンガスを含む。2013年には湧水が急増。メタンガス濃度が基準値を超え、作業員が避難する事態が起きた。
 坑道の一角で、核のごみの「模擬」埋設試験が15年から行われている。
 垂直に掘った穴に、ガラス固化体を収納する金属容器(高さ173センチ、直径82センチ、重さ6トン)を置き、ブロック状の緩衝材で覆う。穴を埋め、坑道をふさぎ、厚さ3メートルのコンクリートでふたをした。
 地下深部は酸素がほぼなく、水の動きは極めて遅いという。容器の内蔵ヒーターを100度まで加熱し、ガラス固化体から出る熱を再現。周囲を水で満たすため、圧力をかけて注水する装置がガタガタ音を立てる。
 試験は少なくとも19年度まで続け、放射性物質を閉じ込める性能を確かめる。センターの佐藤稔紀深地層研究部長は「施工は想定通りクリアした。千年万年後の現象を予測するシミュレーションに使う熱や水、応力、化学のデータを取っている最中」と説明する。
 センターは01年に調査を開始。本年度末までの総事業費は566億円に上る。現在は約100人が働く。
 研究期間は20年程度で終期が迫る。佐藤氏は「もう少し深い所で亀裂や断層がない領域が出てきそうだ。研究の場として、より理想的な条件に近づく」と指摘。「350メートルでの研究を継続するか、(当初計画の)500メートルまで掘るか、埋め戻すか。19年度末までに方針を示したい」と話した。

[高レベル放射性廃棄物(核のごみ)]使用済み核燃料を再処理し、プルトニウムなどを取り出した後に残る廃液で、高温のガラスと混ぜて固めたものを「ガラス固化体」と呼ぶ。極めて強い放射線を出す。日本の使用済み核燃料は約1万8000トンあり、既に再処理した分も含めるとガラス固化体で2万5000本相当になる。2000年成立の特定放射性廃棄物最終処分法で、ガラス固化体を地下300メートルより深く埋める「地層処分」が決定。埋設後の取り出しは想定せず、事実上の最終処分地となる。岐阜県には、硬い結晶質岩で地層処分を研究する日本原子力研究開発機構(JAEA)の瑞浪(みずなみ)超深地層研究所がある。

[科学的特性マップ]火山や活断層が周囲になく、安定的な地層や地質と期待される地域を「好ましい特性が確認できる可能性が相対的に高い」(黄緑色)と判断。このうち船による搬入を想定し、海岸から約20キロの範囲を「輸送面でも好ましい」(緑色)と強調する。
 活断層の周辺、火山の中心から半径15キロの範囲などを「好ましくない特性があると推定される」(オレンジ色)と指摘。油田やガス田、炭田がある地域も将来掘り起こされる可能性から「好ましくない」(灰色)と分類した。


2018年11月15日木曜日


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