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<高校生のシゴト力>酒粕ミルクスイーツ 気仙沼向洋高宮城 地元の食文化継承し魅力発信へ

少し緊張した表情で販売会開始前の打ち合わせをする生徒たち。新商品の「酒粕ミルクどら焼き」(1個140円)に加え、歴代スイーツと伝統のサンマ缶詰がきれいに並べられた=10月28日、気仙沼市階上公民館

 東北有数の港町、気仙沼市。漁業や水産加工業のイメージが強いこの町で、気仙沼向洋高(佐藤浩校長、生徒359人)は「酒粕(さけかす)ミルクスイーツ」作りに取り組む。地域の食文化の一つ、酒粕を使ったアイデアを考え、市内の菓子業者らの協力を受けて商品化。10月28日には、地元の階上公民館まつりで今年の新商品を含む7種類が販売された。
 スイーツ作りを進めるきっかけになったのは、東日本大震災後の2013年に一般社団法人「アイ・クラブ」(当時はNPO)が気仙沼で開いた講演会だ。クラブが提唱する「新しいアイデアを生み出し、未来を考え、学ぶ『イノベーション教育』」に、参加した教諭らが心を動かされた。「生徒の判断力や考える力、創造力が高められる。地元の復興にも役立てられる」

<なじみの食材>
 一緒に取り組む生徒を募り、新たな価値創造を進める中で着目したのが酒粕だった。気仙沼には老舗の酒造会社が複数あり、酒粕はなじみが深い。メヌケのあらと白菜の古漬けに酒粕を加え、とろ火で煮込む「あざら」は代表的な郷土料理だ。しかし、人口減や核家族化、食の多様化などで、酒粕が家庭で使われる頻度は減り、若い世代では知らない人もいるという。
 「地域の食文化を守り、受け継いでいこう」。生徒たちは酒粕をスイーツに取り入れることで、広い世代に伝えられると考えた。14年度には酒粕と市内の牧場で生産される牛乳を組み合わせた「酒粕ミルクジャム」が誕生。後続商品のベースにもなっている。
 15年度からは「商品開発」の授業に取り入れ、産業経済科の2年生が全員で取り組む。アイデアづくりから、販売、市場調査、広告などの知識、技術を学ぶ。市内の菓子店に協力してもらい、自分たちのアイデアが商品化できるものかどうかも検証する。

<王道に一工夫>
 今年のアイデア発表会では、40人が8グループに分かれ、それぞれの案を発表した。共通項は「幅広い年齢層にアピールできて、土産品にもなる」という点。復興に向かう気仙沼の新しい魅力を発信したいという思いにあふれていた。
 今年の商品化アイデアに選ばれたのは「酒粕ミルクどら焼き」。あんこと酒粕ミルクが入ったどら焼きで、二つの味が楽しめる。考案した「7班AWARS」の馬上有世(まがみあると)さん(16)は「王道のどら焼きにアクセントを加えることで安定的に売れると考えた」とマーケティング的な視点を強調。菊地さゆりさん(16)は「家族全員で食べてもらいたい」と声を弾ませた。
 津波で浸水した旧校舎から約8キロ離れた仮設校舎で学んでいた生徒たちは今年8月、地元に建てられた新校舎に戻った。階上公民館まつりでは、同校伝統のサンマ缶詰も酒粕スイーツと一緒に販売。帰ってきた生徒たちの「手土産」は1時間ほどで売り切れた。
 指導に当たる安倍優文(まさふみ)教諭(36)は「多くの人と関わることで人間性の成長が図られ、地域貢献の一翼を担うことができる授業だと実感している」と話した。
(河北新報メディアセンター・山形泰史)

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2018年11月18日日曜日


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