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<阿武隈川物語>(22)猫やムカデ 代々敬う

猫神さまの石碑を調査する石黒さん(左)=丸森町大内の高田石碑群
1895年に奉納されたムカデ絵馬。阿武隈川を渡って参拝客が訪れた祭りのにぎわいを伝える(角田市郷土資料館提供)

◎第4部 養蚕(6完)守り神

 のどかな田園地帯の宮城県丸森町大内にある高田石碑群。愛らしい猫の姿が刻まれた石碑が2基並ぶ。1889(明治22)年と1914(大正3)年、地区で養蚕が盛んだった時代を物語る。
 町内には蚕をネズミから守る「猫神さま」の石碑と石像が計81基あり、日本一の多さを誇る。養蚕信仰は全国さまざまだが、阿武隈川流域は石碑と石像が多いのが特徴だ。
 猫神さまに詳しい宮城県村田町歴史みらい館の石黒伸一朗専門員(60)は「丸森は花こう岩の産地で、石工が多かった。伊達市梁川町で採れる『赤滝石』という凝灰岩が、丸森でも使われている。石は阿武隈川の舟運で運ばれたのだろう」と推測する。

<東北最古の石碑>
 1702年に出版された養蚕書「蚕飼養法記」には「家々に必ずよき猫を飼い置くべし」と記されているという。丸森町の中島天神社に「猫神」の字が刻まれた1810年の石碑があり、東北最古とされる。江戸時代から猫神さま信仰はあつかった。もっとも、石黒専門員によると、ペットの供養碑と考えられるものも少なくないという。飼い主と猫の親しい時間が浮かぶようだ。
 猫ブームにあやかり、町観光物産振興公社は斎理屋敷で12月9日まで、猫神さまを写真パネルで紹介する企画展を開いている。昔は蚕を守り、今は客寄せと、猫が丸森に福を招く。

<奉納絵馬2万枚>
 阿武隈川東岸の角田市鳩原の福応寺毘沙門堂には、ネズミが嫌うというムカデの絵馬が伝わる。1768年の絵馬から昭和20年代まで、宮城県南はじめ東北各地から奉納された2万3477枚が残る。養蚕が成功すると倍返しする風習で増えた。
 旧暦4月3日に行われた毘沙門堂のお祭りは、参拝客が渡し舟で阿武隈川を渡って訪れた。境内の手伝いと舟こぎを、地区住民が半々になって担当した。
 絵馬は2012年、県内初の国の重要有形民俗文化財に指定された。福応寺は来年5月以降、絵馬の展示館を開館する予定だ。住民有志がイベント開催などを検討する。
 福応寺総代長で元養蚕農家の渡辺辰雄さん(90)は、文化財指定に当たって絵馬の整理作業に携わった。渡辺さんは「国の文化財に認められたことは地域として大変光栄。今は養蚕を知らない人が多いが、絵馬を通して歴史を感じてほしい」と望む。(角田支局・会田正宣)

[養蚕信仰]猫の石碑と石像は宮城県で123基、福島県18基、岩手県12基、長野県11基などが確認されている。群馬県にはネズミよけの猫を描いた「新田猫絵」が伝わる。猫以外に蛇神さまや「蚕神」と刻まれた碑などもある。


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2018年11月18日日曜日


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