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<この人このまち>補助金頼らずコメ作り 農家の自立を目指す親子

酒造米「山田錦」の出来をみる黒沢重雄さん(左)と伸嘉さん親子

 宮城県涌谷町に国の補助金に頼らないコメ作りを続ける農家がいる。「黒沢ライスサービス」の黒沢重雄さん(71)と長男伸嘉さん(42)親子は「農家の自立」をテーマに掲げる。奮闘する姿に、農業の発展のヒントが隠されている。(小牛田支局・山並太郎)

◎黒沢ライスサービス 黒沢重雄さん、伸嘉さん/「『農業はつらくて大変』という意識を変えたい」

 −「農家の自立」とは。
 重雄「安心・安全で品質の高い農作物を作り、自ら販路を確保して利益を得る。補助金に一切頼らず、全ての責任を負い『農家は個人事業主』という意識を持つようにしている」
 伸嘉「コメの特徴を生かしてさまざまな食とつなげるのが重要だと思う。例えばすしに合うコメは、焼き肉とマッチする味は、といった具合に。宮城県北や郡山市の酒蔵、仙台市のデパート、遠くは香川県や山口県の取引先にも趣旨に賛同してもらっている」

 −「自立」を意識し始めた時期は。
 重雄「35年ほど前、国の減反政策がきっかけだった。まずは『地域で一つになって生産量をまとめよう』と考え、周辺の農家45戸に呼び掛けた。しかし、反応はなかった。地元に集落営農の考え方がない時代で、みんな不安はあっても危機感は薄かったのかもしれない。『それでは自分だけでやろう』と決意した。週末に仙台市に行き、今でいう道の駅のようにコメや野菜を直売した。10年ほど続ける間にお客さんも増えて『来週も買いに来るよ』という言葉が励みになった」
 重雄「最初は地域や農協と連携して進めたかった。でも、自立のために必要な行動だった。批判も受けたが、信念を曲げなかった。かつては反対だった農協の元組合長から『将来的に必要な形だ』と声を掛けてもらって、取り組みが間違っていなかったと思える」

 −環太平洋連携協定(TPP)導入については。
 重雄「世界の自由経済を考えると賛成だ。協定導入で経済への結果が出るのは5〜10年後だろうか。その間に農業部門が対応できる仕組みが必要だが、個々の農家が意識を高く持てば可能だと信じている」

 −次世代が目指す農家の形は。
 伸嘉「『農業はつらくて大変』という意識を変えたい。機械化も進み、作業は昔よりも効率的になっている。農業を通じ、他分野の人たちや全国のお客さんとつながる楽しみもある」
 重雄「そういう意味で、東日本大震災の風評被害で東北の農作物が今でも避けられているのは残念だ。一日も早く回復してほしい」

[くろさわ・しげお]1947年、宮城県涌谷町生まれ。小牛田農林高卒。地元で100年続く農家の3代目。

[くろさわ・のぶよし]1976年、同町生まれ。九州東海大卒。農地50ヘクタールでコメ12種類を生産・販売し、取引先は飲食店、酒蔵、生協など全国20店超。


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2018年11月19日月曜日


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