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<転機の米作り 秋田の産地は今>最終部 来年へつなぐ(上)消費者を意識 面白い

秋田県外の顧客らと談笑する正さん(後方右から2人目)。後ろで料理を配るのは友基さん=2日、秋田県大潟村

 国による米の生産調整(減反)の廃止で生産環境が変わった今年、秋田県の大潟村と美郷町の米農家を1年間追い続けた。需要減は歯止めがかからず、産地間競争は激しさを増す。締めくくりとなる最終部では、それぞれの農家が実践してきた米作りの土台を来年につなげようとする姿に迫る。(秋田総局・渡辺晋輔、鈴木俊平)

◎大潟村 専業農家黒瀬友基さん(41)

<顧客招き宴会>
 大潟村の米農家、黒瀬友基さん(41)の自宅に隣接する販売会社ライスロッヂ大潟。2日夜、建物の2階に首都圏や北海道からの個人客ら6人と黒瀬さん一家が集まった。
 「いらっしゃい」。父の正さん(74)のあいさつで恒例の宴会が始まった。テーブルにはオードブルや刺し身などが並び、酒が進むほどに会話が弾んだ。
 参加した川崎市の会社員吉原淳平さん(35)は、以前に勤務した宅配専門の生協で扱った黒瀬さんの米を自宅用に買う。「米は家庭で一番消費する。作り手を意識して購入している」と述べた。
 15ヘクタールで無農薬栽培と減農薬栽培に取り組む友基さんは、ライスロッヂの経営者でもある。他の農家9戸から仕入れた分と合わせて年間240〜300トンの米を卸売会社や約1500の個人に販売している。
 ガソリンや肥料、包装資材が値上がりしているが、販売価格は米価と連動させず今年も据え置く。一方で人件費などの固定費がかかり、「現在の規模を売らないと厳しい」と漏らす。

<販路開拓 課題>
 無農薬栽培や直接販売のスタイルは、正さんが約30年前に始めた。2007年にUターンで戻った友基さんが継いだ。代替わりや核家族化に伴って個人の顧客の消費量は若干だが減っており、新たな客の開拓が課題だ。
 米離れが言われる中、街中のコンビニエンスストアではおにぎりが人気だ。「米は特別な主食。日本人のアイデンティティーにつながると考える人は多い」と友基さんは感じ取る。
 だが、現実には国産米の国内需要=?=はしぼみ続ける。農林水産省が示すのは年間8万トン程度の減少。全農秋田県本部はさらに厳しい数字を見込む。2015〜17年産米の米価が連続して上昇し、3年間で需要が43万トン落ち込んだと分析。年平均で14万トン減と、減少幅は国が示す減少トレンドより大きい。

<「活路はある」>
 米を特別扱いしていたからこそ「主食はいい物を」との風潮があった。「こんなに減り続けると、やがて単なる食材の一つと見なされるのではないか」。品質を追求してきただけに漠然とした不安を抱く。
 今年は天候不順で収量は1割以上落ちた。さらに無農薬栽培を支える水田の除草作業では人集めに年々苦労している。課題はあるが、それでも農業の世界に飛び込んだ11年前の決断は「良かった」と振り返る。
 「消費者を意識した米作りは面白い。国内需要が減っても生き残る道はあるはずだ」。友基さんは言い切る。

[国産米の国内需要]農林水産省の需要見通しによると、1996年7月〜97年6月は943.8万トン。2012年7月〜13年6月に800万トンを初めて割った後も下げ止まらず、18年7月〜19年6月は推計値で741.1万トンと、23年間で200万トン減っている。


関連ページ: 秋田 社会

2018年11月20日火曜日


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