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<アサガオプロジェクト>津波で犠牲になった児童が育てた種、新米先生へ 震災の記憶受け継ぐ

アサガオに水やりをする円田小の児童(星教諭提供)

 東日本大震災の津波で犠牲になった児童が大切に育てていたアサガオの種が、新米教員の手に託され、宮城県内各地の学校で受け継がれている。県教委の「アサガオプロジェクト」。震災を経験した教員の思いが、復興を担う人材を育てる教育の現場に広がる。
 「先生として生きていくと、うれしさや楽しさだけでなく、つらいことや逃げたくなることもある。それらも受け止め、教員の使命を全うしてほしい」
 県教委教職員課の担当者が教員採用予定者の説明会で訴えたのは昨年12月。津波で亡くなった児童とアサガオのことを話し、小さな袋に入れたアサガオの種5粒を希望者約100人に配布した。
 県教委によると、引っ込み思案だった児童はアサガオの栽培を通じて「生き生きとするようになった」。収穫した種は女性担任が預かり、進級時に児童に手渡すはずだった。震災がその機会を永遠に奪った。
 「精神的につらく、教師としての自信をなくしかけた」という女性担任。震災後、種を自宅に持ち帰り、在りし日の児童の面影をしのんでひっそりと育てた。
 震災で多くの小さな命が失われた。教員として震災とどう向き合い、次世代の人材を育てるべきか−。その思いを新人にも受け継いでもらおうと、県教委が始めたのがアサガオプロジェクトだ。
 蔵王町円田小で今夏、アサガオが花を咲かせた。説明会で種を受け取った星あゆか教諭(31)は、4月から担当する特別支援学級で児童と成長を見守った。
 「忘れかけていた震災を思い出すきっかけをもらった」と星教諭。震災当時は講師として教壇に立ち、避難所運営も手伝った。「次は子どもにきっかけを与える側にならないと」と気を引き締める。
 このほか、県教委には写真付きの成長記録も届いている。
 県教委は今年も12月の新採用者の説明会でアサガオの種を配り、採れた種を送り返すように呼び掛ける予定だ。担当者は「教員の志を種に乗せ、つないでいきたい」と願いを込める。


2018年11月21日水曜日


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