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<転機の米作り 秋田の産地は今>最終部 来年へつなぐ(下)収益確保へ模索続く

早朝からセリの収穫に追われる照井さん。作業は昼すぎまで続いた=15日、秋田県美郷町

 国による米の生産調整(減反)の廃止で生産環境が変わった今年、秋田県の大潟村と美郷町の米農家を1年間追い続けた。需要減は歯止めがかからず、産地間競争は激しさを増す。締めくくりとなる最終部では、それぞれの農家が実践してきた米作りの土台を来年につなげようとする姿に迫る。(秋田総局・渡辺晋輔、鈴木俊平)

◎美郷町 兼業農家照井勇一さん

 畔(あぜ)の脇を流れる透き通った冷水に、束にしたセリを突っ込む。絡み付いた雑草や泥を洗い落とすと、浅い緑の茎と純白の根っこが顔をのぞかせた。
 「この瞬間が病みつきになるんだね」
 寒空が広がる11月中旬の秋田県美郷町。兼業農家照井勇一さん(64)が、稲刈り後の田んぼを横目にセリ収穫に明け暮れていた。

<新たな収入源>
 農業の新たな収入源として昨年から始めた。今冬は耕作していない知人の水田を借り受け、セリ田にして栽培拡大に踏み切った。
 「本業」の稲作は不調だった。悪天候に苦しみ、収量は例年比3割減。厳しい結果の出来秋となった。苦虫をかみつぶすように「自然は気分屋だから」と言い聞かせる。
 秋田産米の相対取引価格は10月現在で前年をやや上回る。国による生産調整(減反)が廃止された今年、注視した米価に大きな動きはなく、軒並み堅調だった。
 ただ、現在需要が高い業務用米などの動向次第では変動が起こりうる。「減反廃止の影響は来年以降から本格化するはずだ」と身構える。
 ライバル産地の動きをにらみつつ、東北6県の全農各県本部は農協に支払う本年産米の概算金を引き上げた。4年連続の上昇。地域営農を支える農家の所得確保に腐心した。

<表情はさえず>
 秋田県本部も主力品種あきたこまちの概算金(60キロ、1等米)を前年比800円増の1万3100円に設定したが、照井さんの表情はさえない。「昔は2万円を超える年もあったから」
 地元の秋田おばこ農協(大仙市)の赤字改善策として、組合員には今年から主食用米60キロにつき負担金500円がのしかかる。
 概算金より高い約1万4000円とうまみが多かった卸売業者との直接取引は今年、見送らざるを得なかった。耕作放棄の水田の受託やセリ栽培に追われ、業者向けの出荷にまで手が回らなかった。「二重苦、三重苦。自分がもう2、3人いればな」と苦笑する。
 外食向けなど業務用米からの引きが強まり「質より量だ」と感じている。とはいえ、自分で生産できる量には限界がある。需要に即応できない現状がもどかしい。

<存続懸け思案>
 それでも、米以外を含めた収益確保の「変革」に余念がない。セリの拡大、加工用米から主食用米への転換、卸売業者との販路確立−。なりわいの存続に向け思案を重ねる。
 自分のような個人経営の農家は柔軟に判断して動けることが強みだと信じ、照井さんは来年を稲作の勝負の年と位置付ける。「需要と供給を見極めて販路を広げ、攻勢を仕掛けたい」と力を込めた。

[秋田産米の相対取引価格]農林水産省によると2018年10月現在、あきたこまち1万5797円(前年同期比138円増)、めんこいな1万4659円(同113円増)など。秋田産を含めた全銘柄平均価格は1万5707円。新米が出回り始める時期は価格が高く、徐々に下落していく傾向にある。


関連ページ: 秋田 社会

2018年11月21日水曜日


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