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<東日本大震災>被災地から受け入れた要介護者を故郷へ 弘前の社会福祉法人、希望聞き取り移送目指す

関係者に新事業を説明する宮本さん(左)=気仙沼市

 介護保険施設を運営する弘前市の社会福祉法人弘前豊徳会が、東日本大震災で被災した宮城、岩手、福島3県から受け入れている要介護者らの帰郷に向けた新事業に乗り出した。一人一人の要望を聞き取るなどして、希望する地域周辺の施設への移送を目指す。国の災害特例解除に備える意味もある。

 新事業は宮城県からの入所者から着手した。入所者本人と家族を対象に、希望する帰郷先(宮城県内と岩手県南の一部)と施設タイプなどを年内に調査。併せて宮城県内約300の医療介護施設の受け入れ態勢を把握する。調査結果はデータベース化してまとめるという。
 宮城県内の施設に空きが出た際、データを基に選んだ入所者を弘前豊徳会が移送する計画だ。
 弘前豊徳会は国の災害特例に基づくなどして、運営する複数の施設で被災3県の要介護や要支援者延べ167人を受け入れた。今月1日現在、宮城、岩手県の各26人、福島県の17人が入所している。
 避難者の帰還につながるだけに、新事業に対する被災地の期待も大きい。宮城県は6月、弘前豊徳会の取り組みを本年度の復興支援事業に採択し、上限100万円の助成を決定。福島県も8月に同様の助成金支出を決めている。
 弘前豊徳会の広域支援相談員宮本航大さん(39)は8月、事業内容や目的を説明するため、気仙沼市地域包括支援センターを訪問。応対した熊谷悦子所長は「(地元を離れた入所者は)帰りたい人が多い。大変ありがたい」と応じた。
 被災地から受け入れる要介護者に関する災害特例の適用期間に、明確な規定はない。だが、弘前豊徳会は「定員超過の状態がいつまでも認められるとは考えにくい」と判断、対応を進めることにした。
 震災から7年以上が過ぎても、被災者の望郷の思いに変わりはない。弘前の施設に入る元飲食店従業員の佐藤忠子さん(83)は、60年以上暮らした気仙沼市で被災した。「気仙沼にはお客さんとの楽しかった思い出がいっぱいある。できることならもう一度帰りたい」と話す。
 宮本さんは「一人でも多くの入所者が希望した場所で暮らせるようにしたい」と語った。

[災害特例]災害救助法が適用される大規模災害時に、国が発令する。行政機関や民間企業を対象に、通常の制度で定められている範囲を超えた対応を許可する措置。介護保険施設では、被災地からの要介護者らについて定員を超えて受け入れることなどが認められる。


2018年11月24日土曜日


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