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<東日本大震災>被災の高齢者施設、入管法改正案に注目 介護職員不足、外国人に期待

介護スタッフと過ごす高齢者ら。人材確保は急務だ=東松島市の不老園

 東日本大震災や東京電力福島第1原発事故で被災した高齢者施設の経営者らが、外国人労働者の受け入れを拡大する入管難民法改正案の審議の行方を注視している。人手不足で利用者の受け入れを制限している施設も多く、外国人労働者への期待は大きい。一方、指導する日本人スタッフの不足や、現状の待遇改善を訴える声も少なくない。
(報道部・菊池春子)

<36人待機中>
 太平洋を望む高台の居室は、がらんと空いたままだ。津波で被災した東松島市野蒜ケ丘の特別養護老人ホーム不老園。内陸へ移転して今年2月に7年ぶりに再開したが、スタッフ不足から定員60人に対し受け入れは22日現在、12人にとどまる。36人が待機中で、うち5人は独居老人だ。
 「人材確保は待ったなし。外国人労働者受け入れ拡大の方向性は歓迎したい」。飯塚三郎施設長(69)は期待を寄せる。
 業界全体で人手が不足し、休止中に他施設に移った職員らは「転職先でなくてはならない存在」になっているといい、新規採用も限界がある。
 二重ローンを抱える中、利用者を受け入れられなければ収入が確保できず、施設の存続にも影響する。現段階では、外国人に求める日本語能力の水準など不透明な部分はあるが、飯塚施設長は「課題を解決し、実効性のある施策を展開してほしい」と話す。
 被災地では、まずは外国人労働者の受け入れ態勢の確立や、潜在的な労働力の活用策を進めるべきだとの声も多い。

<支援が必要>
 津波と原発事故で被災し、昨年12月に再建した南相馬市原町区の介護老人保健施設ヨッシーランドも人手不足に悩む。定員100人に対する受け入れは25人ほどで、60人以上が待機する。
 若手職員の多くは県内外の避難先で生活再建した。新たに採用したスタッフが大半で、介護業界が初めての人も少なくない。池田幸事務局長(66)は「中長期的に外国人受け入れは必要だが、現状では指導できる日本人スタッフの育成が間に合っていない」と話す。
 多角的な施策も求められる。子育て中の女性3人が面接を受けたが、子どもの預け先が確保できないなどの事情で、いずれも就職には至らなかった。
 池田事務局長は「子育てとの両立支援や保育士の不足など、人材確保に向けたトータルな施策の推進が不可欠」と指摘。人口が急減した原発被災地に特化した対策も訴える。
 既に複数の外国人スタッフが働いている宮城県沿岸部の高齢者施設の担当者は「重要な戦力になっているが、環境や文化の違いは大きい。慣れるまで現場での支援が重要だ」と話す。日本人職員の中で日本語や技術指導の担当者を決め、サポートしている。
 受け入れ態勢を整える上でも「介護報酬の引き上げなど、根本的な待遇改善がおろそかになってはならない」と指摘する。

[メモ]各県の調査によると、介護現場で働く外国出身者は岩手31人(5月末現在)、宮城101人(1月現在)。日本人と結婚した定住者らが大半を占める。宮城の調査では、受け入れの課題を尋ねたところ「日本語力の不足による介護記録作成への支障」との回答が最多だった。福島は未調査。


2018年11月26日月曜日


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