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<岩手大・学内カンパニー繁盛記>(中)MMM(エムキューブ)/文理融合で文化財複製

デザイン班が彩色したミニチュアを手元に、志波城跡南門の3Dモデルを調整する造形班の学生たち

 研究室でもなければサークルでもない。それが今年で発足10年となる岩手大の独自組織「学内カンパニー」だ。学生が「社長」や「社員」となり、大学から経費を受け取って日夜、ものづくりに励んでいる。夢の実現や技術力の向上、地域貢献という大志を抱いて奮闘する学生たちの「職場」を訪ねた。(盛岡総局・斎藤雄一)

 8人の造形班と2人のデザイン班。岩手大の学内カンパニー「MMM(エムキューブ)」は、総合大学の強みを生かして理系と芸術系の学生がタッグを組む。

<互いの強み活用>
 主力事業は、3Dプリンターを活用した文化財の複製だ。これまでに東日本大震災の復興かさ上げ工事で埋め立てられた「五本松の巨石」(陸前高田市)や、国の重要文化財に指定されている岩手大農学部の「門番所」を手掛けてきた。
 作業はプログラミングに精通する造形班の写真撮影から始まる。文化財をあらゆる角度から数百〜数千枚収め、コンピューターの専用ソフトに取り込む。微修正を重ねて3Dモデルを画面上に構成する。
 3Dデータは真っ白な樹脂製のミニチュアとなって出力される。芸術分野を専攻するデザイン班は、実物資料と見比べながら絵筆で丁寧に彩色を施す。
分野の裾野拡大
 もともと理工学部生の知識実践の場として始まった学内カンパニー制度だが、ここ3年ほどで裾野が広がり、人文社会科学、教育、農学の各部から「入社」する学生も増えた。今では理工学部生が一人もいないカンパニーもあるほどだ。
 社長の理工学系の大学院2年古川勝さん(24)は「結果を求める理系のプログラマーと過程を大切にする芸術系のデザイナーは、違う世界が見えている」と痛感。「良いプログラムを組んでも、最後はデザインに救われることが多いと気付いた」
 古川さんは来春、東京のゲーム製作会社に就職する。学生時代にデザイナーと二人三脚でものづくりに打ち込んだ経歴は、面接でも高く評価されたという。

<新たな試み挑戦>
 エムキューブは本年度、盛岡市の国指定史跡「志波城跡」を3Dで再現し、敷地内を実際に歩いているかのような動画を制作する。合わせて志波城跡をPRするキーホルダーも作る。
 形状が決まっている文化財と異なり、キーホルダー作りはゼロからのスタート。デザイン班は城跡に植えられている桜をあしらった模様を検討し、造形班は量産用の型を作成する。
 デザイン班の教育学部4年成瀬優美さん(21)は「お互い得意な範囲は違う。分からないことは教え合いながら完成を目指したい」と腕まくりをする。文理融合がもたらした専門分野の異なる「同僚」との切磋琢磨(せっさたくま)が、知識と技術の幅を広げている。


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2018年11月28日水曜日


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