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<岩手大・学内カンパニー繁盛記>(下)工房彩縁/ウニ染めで古里活性化

ウニ殻で染めたハンカチを手にする(前列左から)野口さん、吉野さん(後列左から)吉田さん、天木教授

 研究室でもなければサークルでもない。それが今年で発足10年となる岩手大の独自組織「学内カンパニー」だ。学生が「社長」や「社員」となり、大学から経費を受け取って日夜、ものづくりに励んでいる。夢の実現や技術力の向上、地域貢献という大志を抱いて奮闘する学生たちの「職場」を訪ねた。(盛岡総局・斎藤雄一)

 「早く何かしないと…」。そんな焦燥感が、岩手大教育学部4年の野口瑛(あき)さん(21)を突き動かした。
 高校卒業まで過ごした古里は、岩手県の沿岸最北に位置する洋野町。学ぶ環境が整った大学在学中に、人口減少が進む町を元気づけたいと考えていた。だが、最初の一歩を踏み出せない。

<試行錯誤の作業>
 そんな時、たまたま目に入ったのが学内カンパニー制度の案内だった。すぐさま説明を聞きに走り、仮想企業「工房彩縁(さいえん)」を起こした。
 地域貢献を目的として考案した事業は、洋野町種市で採れるウニの殻を使った染め物だ。父親が素潜り漁師の野口さんにとってウニは幼い頃から身近にあった。
 それでいて「殻は廃棄処分されるだけでもったいないな」。それに「沿岸は内陸より伝統工芸が少ない気がする」。心のもやもやを並べてみたら、カチッと組み合った。これだ!
 染料を抽出するウニ殻は、町の水産加工会社に頼み込み無償で譲ってもらった。被服学の天木桂子教育学部教授を顧問に招き、試行錯誤して作業手順を確立した。
 ウニ殻を発色剤のミョウバンに浸した後、鍋に入れて70〜80度で10分ほど煮出す。煮出した汁を絹のハンカチに染み込ませて乾かすと、柔らかなピンク系の色が出る。ぬかを加えて磯臭さを消した。

<「地元で就職を」>
 ウニ染めハンカチは、町内の土産物が並ぶ「ひろの水産会館ウニーク」で販売中だ。天木教授は「地場産品に着目したアイデアにこそ価値がある。見事に地域活性化の種をまいた」と目を細める。
 「ウニという町の自慢を他地域の人にはまだ伝え切れていない」と野口さん。大学を巣立った後、カンパニー活動を通じて一層愛着の湧いた地元で就職したいとの思いを強くしている。仕事の傍ら、ウニ染め技術の発信に取り組む考えだ。

<未来に引き継ぐ>
 来春以降のカンパニー運営は、ともに人文社会科学部の3年吉野碧(あおい)さん(20)=福島県猪苗代町出身=と1年吉田藍(あい)さん(19)=名取市出身=が担う。
 吉野さんは「入社前は洋野町のことをほとんど知らなかった」と打ち明け「業務で足を運べば地元の人とつながりができるはず」と期待を膨らませる。吉田さんは「三陸のワカメや昆布を使った染色にも挑戦してみたい」。
 岩手の多彩な魅力に気付き、人との縁を結ぶ工房。地域貢献への思いは社名の通り、決して色あせることなく未来の社員たちへと受け継がれていく。


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2018年11月29日木曜日


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