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<市民の力 NPO法20年>(1)復興/震災7年 運営の岐路

海体験イベントに参加した気仙沼の子どもたち。右端が笠原さん=7月(NPO法人浜わらす提供)

 特定非営利活動促進法(NPO法)が施行されて、12月1日で20年を迎えた。「NPO」の言葉は広く浸透し、法人数も全国各地で増えた。福祉や教育、まちづくりなど行政や企業の手が届かない問題に取り組み、存在感を高めてきた。社会情勢の変化や東日本大震災の発生を機に資金獲得の工夫や事業の深化など、さらなる自立が求められている。NPOが抱える課題を探った。
(生活文化部・長門紀穂子、越中谷郁子)

<ハイブリッド>
 2011年3月11日に発生した震災は、NPOを取り巻く環境を大きく変えた。復興支援のために多くの人々が被災地を行き交い、一般市民の間でもボランティアへの関心が高まった。NPOは名実ともに身近な存在になった。
 震災後設立されたNPO法人の特徴について、支援団体と行政などの橋渡し役を担うみやぎ連携復興センター代表理事の石塚直樹さん(38)は「ボランティアで被災地に入った外部の人が、地元の人たちと協働する『ハイブリッド型』組織が多い」と分析する。「外部の支援者が定住し、復興に関わり続ける。地元住民と互いに影響し合う、掛け算が起きている」
 気仙沼市で子どもたちと海をつなぐ活動を続けるNPO法人「浜わらす」は、ハイブリッド型組織の一つだ。代表の笠原一城さん(39)は、震災直前に仙台市から妻の実家がある気仙沼市に移住したばかりの「外部の人」だった。
 「多くの住民が避難していた実家近くの寺を、情報を得るために訪れたのが始まり。住民らで組織した対策本部を手伝っているうちに、浜わらすの前身の支援団体と関わるようになった」と振り返る。
 「地元ならではのしがらみがなかった。課題にぶつかっても客観的に解決方法を考えられたし、やってみようと思えた。活動するうちに、手伝ってくれる地元の人が1人増え2人増え、と輪が広がった」と話す笠原さん。現在、浜わらすには住民13人が中心メンバーとして加わっている。
 筏(いかだ)作りや漁業体験、防災キャンプと体験メニューをそろえ、地元の子どもたちや都市部の大人たちに提供する。「信頼関係さえ築ければ、地元住民の力は強い。話が早く、何でもすぐに実現できる。トップダウンではなく、一人一人が得意技を持ち寄る運営方式に落ち着いた」

<基盤の強化を>
 震災から7年が経過し、復興支援に尽力してきたNPO法人は今、運営の岐路に立たされている。21年3月に予定されている復興庁の解散で、主な資金源としてきた復興交付金がなくなる見通しだからだ。企業・財団などからの助成金も、時間の経過とともに減少しつつある。
 「人件費を含めた原資が減る中、活動に市民をどう巻き込むか。どの団体も考える必要がある」と話すのは、市民活動をサポートする陸前高田まちづくり協働センター理事長の三浦まり江さん(35)だ。
 陸前高田市では昨年、NPO法人や任意団体など計24団体が陸前高田NPO協会を設立した。「商工会のようなイメージ。会員同士が出会う場でもあり、協業が生まれる仕掛けを作りたい」と三浦さんは言う。
 石塚さんは「地域課題は残るのに財源はなくなる。団体の役割、目的を明確にして、今から組織基盤の強化、将来ビジョンの見直しをしていかなければならない」と警鐘を鳴らす。

[メモ]NPOは「Non−Profit Organization」の略称。さまざまな社会貢献活動を行い、構成員に収益を分配することを目的としない団体を指す。法人は9月末現在、全国に約5万1000、東北6県に計約3000ある。うち、災害救援活動を目的にする法人は全国で約4450。震災前の2010年と比べ、約1.7倍に増えた。11年の法改正で税制優遇が受けられる認定制度が創設され、認定NPO法人数も増えつつある。


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2018年12月01日土曜日


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