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<市民の力 NPO法20年>(2)資金/独自の調達方法模索

会員制居酒屋で常連客に酒を注ぐ訓練生と、後ろで見守る白石さん=米沢市

 特定非営利活動促進法(NPO法)が施行されて、12月1日で20年を迎えた。「NPO」の言葉は広く浸透し、法人数も全国各地で増えた。福祉や教育、まちづくりなど行政や企業の手が届かない問題に取り組み、存在感を高めてきた。社会情勢の変化や東日本大震災の発生を機に資金獲得の工夫や事業の深化など、さらなる自立が求められている。NPOが抱える課題を探った。
(生活文化部・長門紀穂子、越中谷郁子)

<居酒屋で訓練>
 非営利団体のNPO法人にとって、活動を維持するための運営資金の調達は常に大きな課題だ。
 学校に行けない子どもが通うフリースクールなどを運営するNPO法人「With優」(米沢市)。代表の白石祥和さん(37)は「助成金や行政からの補助金に頼り過ぎると、切れた後に続けられなくなる」と、自主事業を積極的に行い、資金確保に工夫を凝らす。
 その一つ、会員制居酒屋「結(ゆい)」は、就労に困難を抱えた若者の実践的な訓練の場として、5年前に始めた。「立ち上げ資金は約150人が寄付してくれた270万円で賄った。地域の若者の未来は地域の人で支えよう、と訴えた」と白石さん。
 支える会員は4400人を超え、希望する1200人には働く若者の様子を伝えるメールを定期的に送る。常連客も増えて、これまでに43人が新たな就労先を見つけて巣立ったという。
 時間の合間を縫って支援企業を回り、事業内容や経過を説明する。「地方ではインターネットではなく、直接会って話をする原始的なやり方が合う」と指摘する。寄付は1口1万円からと低額に設定した。大口の寄付1回より小口の寄付を続けてほしいからだ。
 12月中旬には、新たな自主事業「広場カフェ はるにれ」を米沢市内で始める。店内の一角に、市民を活動に巻き込む仕掛けを作るという。地元のNPO法人や大学ボランティアサークルなど10の市民団体の箱をそれぞれ設置。カフェ利用者に500円ごとにコイン1枚を渡し、応援したい団体の箱に入れてもらう。コイン1枚につき、「With優」が10円を団体に寄付する。
 白石さんは「実際にコインを入れる行動を通せば、市民活動への意識が高まるのではないか。地域みんなで支え合う仕組みが必要だ」と力を込める。

<分業制で製造>
 事業の効率化を図って収益を上げるのではなく、同じ価値観を持つ支援者と確実につながって資金を得る方法を模索する団体もある。
 障害者支援を行うNPO法人「しんせい」(郡山市)は、福島県内の13の福祉事業所と分業制で一つの菓子を作るプロジェクトを進める。作業を担うのは、主に東京電力福島第1原発事故で双葉郡から避難した障害者だ。
 「支援企業や団体と意見交換をしたとき、工場を作って作業を集約する提案を受けたこともあったが断った。障害者がそれぞれのペースで生き生きと豊かに働けることが目的だから」と語るのは、事務局長の富永美保さん(54)だ。
 昨年からの3カ年計画で、第三者に自分たちの強みを評価してもらう手法を導入。大量生産とは逆を行く姿勢に共感を持つ人はどんな人なのか、どこにいるのかなど検討を重ねている。
 「福祉関係の商品は安く販売されることが多いが、価値があると評価してくれる人にはむしろ高く売れるのではないか。世界にも目を向け、会員しか買えないような付加価値を付けて売り出す方法を検討したい」

[メ モ]最後の取引から10年以上が経過し、預金者と連絡が取れない「休眠預金」が2019年から、NPOをはじめとする民間の公益活動に活用される。新たな資金源として期待が高まる。NPOの活動維持には、寄付金、助成金、自主財源などさまざまな資金源をバランスよく組み合わせ、財源を分散させることが不可欠とされる。


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2018年12月02日日曜日


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