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<外国人労働者は今>秋田の現場から(上)共生/人口減加速、貴重な戦力

手際よく婦人服を縫い合わせる中国人技能実習生たち=11月21日、仙北市のメンズアキタソーイング

 国が外国人労働者の受け入れ拡大へとかじを切る。事実上の永住も認める在留資格を新設する方針で、国会で大詰めの審議が続く。全国最速で人口減少が進み、労働力不足が深刻化している秋田県では外国人労働者にすがりたいとの至情が膨らむ。一方で制度上の課題も多く残されている。期待と不安が交錯する現場に入った。
(秋田総局・鈴木俊平)

<日本人と同水準>

 仙北市田沢湖のJR秋田新幹線沿いにたたずむ縫製工場「メンズアキタソーイング」。中国人技能実習生の女性14人がミシンやアイロンを器用に使い、ジャケットの山を築く。
 「支えれば、みんな一人前になれる」。高橋康一郎社長(44)が目を細めた。
 人手が足りず、2000年から実習生を受け入れている。18年間で約100人。「町工場を支える大切な従業員たちは家族同然だ」
 日本人従業員と同水準の賃金を支給し、社員旅行や忘年会で親睦を深める。今年3月に来日した范(ファン)暁(シュウ)勇(ヨン)さん(39)は「生活面もしっかり支援してくれて居心地がいい」と笑顔を見せる。
 低賃金労働など実習生への人権侵害の事例が各地で報告される中、高橋社長は「地方企業にとって外国人はなくてはならない存在。結局は、受け入れる経営者の覚悟が問われている」と言い切る。
 秋田県内の外国人労働者は17年10月現在、1679人と全国最少。県は今年10月に各業界団体と連絡協議会を設立し、就労拡大に向け官民を挙げて動き始めた。直後のセミナーには早くも100人近い経営者らが集まるなど、潜在的な需要は表面化しつつある。
 県幹部は「労働力の縮小に歯止めがかからない。外国人材は貴重な戦力だ」と期待する。
 日本と同様に本格的な高齢化社会を迎える欧州などでも外国人労働者への需要は高まっており、国際的な競争が熱を帯びる。
 ベトナム人実習生を受け入れる秋田国際人材開発振興協同組合(秋田市)の鈴木範理事長は「外国人労働者は『売り手市場』。日本、ましてや地方が選ばれる保証はない」と忠告する。

<制度崩壊の様相>

 国が来年4月の施行を目指す入管難民法改正案=?=。一定技能が必要な「特定技能1号」は、既存の技能実習制度からの移行で最長10年間の滞在が可能になる。ただし、能力基準や対象職種は依然不透明だ。
 縫製会社で組織するコーディネート秋田協同組合(同)の佐賀善美理事長は、過去に失踪者が出た経験を挙げ「最初から逃げて難民申請するつもりの実習生もいる。制度設計には限界がある」と明かす。
 相次ぐ違法な時間外労働や賃金不払いを理由に失踪する実習生も後を絶たない。制度崩壊の様相を呈する今、新たな在留資格の足元が既に揺らいでいる。
 「技能実習の現状を無視して新制度に組み込むのは、国による人権侵害の肯定に等しい」。NPO法人「移住者と連帯する全国ネットワーク」(東京)の鳥井一平代表理事は厳しく指摘する。
 「これまでと同様、安い労働力という考え方での受け入れはあり得ない。共生社会を見据えた法整備を真正面から議論すべきだ」

[入管難民法改正案]「特定技能1号」と、より熟練技能が求められる「同2号」を新設し、単純労働分野への就労を認める。1号は在留期間が5年で家族帯同を認めない。2号は期間を更新でき、配偶者と子どもの帯同も可能。農業や介護など14業種に5年間で最大34万5000人の受け入れを想定する。


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2018年12月03日月曜日


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