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<市民の力 NPO法20年>(3)人材/学生・シニアに熱視線

日本NPOセンターのスタッフと打ち合わせする本田さん(左)。「企業で培った知見を生かし、社会に貢献したい」と話す=東京都千代田区

 特定非営利活動促進法(NPO法)が施行されて、12月1日で20年を迎えた。「NPO」の言葉は広く浸透し、法人数も全国各地で増えた。福祉や教育、まちづくりなど行政や企業の手が届かない問題に取り組み、存在感を高めてきた。社会情勢の変化や東日本大震災の発生を機に資金獲得の工夫や事業の深化など、さらなる自立が求められている。NPOが抱える課題を探った。
(生活文化部・長門紀穂子、越中谷郁子)

<底上げに一役>
 学生とシニア。市民活動の担い手としてNPOが今、熱い視線を注ぐ人材だ。
 多賀城市市民活動サポートセンターは、2008年の開館当初から若者や子育て世代、シニアと年代に応じた人材育成に力を入れてきた。昨年からは3年計画で、地元の高校や大学と連携を強化している。
 その一つが「NPOきっかけ塾」。市民活動を手掛ける人と触れ合う機会を設け、若者に地域の課題に気付いてもらうのが狙いで、今年は高校生や大学生10人が参加した。
 東北学院大災害ボランティアステーションのスタッフや、子ども向けボランティアの多賀城市ジュニアリーダーOBに体験談や活動の魅力を聞き、自分にできることを具体的に考えるワークショップを開いた。
 人材育成の取り組みは市民活動の底上げに一役買っている。センター長の中津涼子さん(42)によると、サポートセンターの支援でこれまでに市内で約40団体が発足した。中津さんは「課題に気付いたら声を上げられる社会を目指し、今後もコンテンツを用意していく」と力を込める。

<環境の整備を>
 首都圏ではNPOで活躍するシニアを企業が支えるケースも出てきた。
 認定NPO法人「日本NPOセンター」(東京)の事務局スタッフ本田恭助さん(61)の前職は、花王(東京)の国際事業戦略部長。海外の販売計画を統括してきた。
 在職中にCSR(企業の社会的責任)検討事業に携わったのを機に社会貢献活動に関心を持った。定年を迎えた昨年6月、シニア社員として花王に再雇用され、出向先に日本NPOセンターを選んだ。
 この1年半で事業報告書作りや経理システムの改善、イベントの運営など多岐にわたる業務を担った本田さん。「綿密な市場調査や経営戦略を基に活動計画を立てて利益を出す企業と違い、行動や提言で社会を動かすのがNPO。事業の根拠が抽象的すぎて戸惑うこともあるが、やりがいがある」と笑顔を見せる。
 日本NPOセンター事務局長の吉田建治さん(39)も「事業計画に合わせた予算の組み方など組織の運営方法を模索中だった。本田さんのキャリアが助けになっている」と信頼を寄せる。
 働く場としてNP0を見た場合、契約職員や有償ボランティアといった多様な雇用形態がある一方、正規職員は募集が少なく賃金も一般企業に満たない組織が少なくない。資金繰りに苦労する零細NPOも多く、労働環境の整備は課題の一つでもある。
 吉田さんは企業が人件費を負担し、NPOに社員を送り出すことが社会貢献の一つとして各地に広がるとみる。花王のように東北に事業所を持つ企業が、NPOにシニアの出向を打診する動きも出ている。「非営利組織での経験を企業活動に還元できるメリットもある。人材交流が進めば相互理解も深まり、協業しやすくなるだろう」

[メモ]全国に約5万1000あるNPO法人は、雇用の受け皿としても期待されている。内閣府が約6400のNPO法人を対象に行った実態調査(2017年度)によると、常勤の有給職員は平均約5人で、1人当たりの人件費は年間約231万円となっている。


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2018年12月03日月曜日


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