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<市民の力 NPO法20年>(4)組織力/不正の芽摘む知識を

10月に開かれた組織運営力強化プログラムの一こま。NPO関係者が事務のノウハウを学んだ=仙台市青葉区の市市民活動サポートセンター

 特定非営利活動促進法(NPO法)が施行されて、12月1日で20年を迎えた。「NPO」の言葉は広く浸透し、法人数も全国各地で増えた。福祉や教育、まちづくりなど行政や企業の手が届かない問題に取り組み、存在感を高めてきた。社会情勢の変化や東日本大震災の発生を機に資金獲得の工夫や事業の深化など、さらなる自立が求められている。NPOが抱える課題を探った。(生活文化部・長門紀穂子、越中谷郁子)

<情報共有せず>
 あの時、不正は防げなかったのか−。松田英明さん(57)は今も、じくじたる思いを拭えずにいる。
 福島市から観光案内所運営の業務委託を受けていたNPO法人(福島市)の理事が2年間にわたり、経費や給与約200万円を着服していた事件のことだ。退職した職員が、「源泉徴収票と実際の給与の額が違う」と申告したことから2005年に発覚した。
 松田さんは当時、法人の顧問を務めており、まさかの不祥事に耳を疑ったという。過去の領収書と会計帳簿を突き合わせると、ずさんな会計処理が判明し、業務情報が共有されていないといった組織の脆弱(ぜいじゃく)さが浮かんだ。所長だった理事は全額を弁済し解雇された。
 松田さんは「運営を指揮監督する理事や執行責任者の事務局長、両者をチェックする監事が役割を徹底すれば不正の芽を摘めたはずだ」と振り返る。
 1998年施行の特定非営利活動促進法(NPO法)は、市民の監視や団体の自浄作用を前提に認証・監督権を持つ行政の関与を制限する。多くのNPOが健全な組織運営を目指し、内閣府や団体のホームページで事業報告書や貸借対照表などを公開しているが、制度を悪用する人がいるのも事実だ。

<事務基礎学ぶ>
 2014年には、岩手県山田町から東日本大震災の復興支援事業を請け負ったNPO法人(北海道旭川市)の元代表理事らが5300万円を横領したなどとして逮捕された。震災後の混乱に乗じ、多額の支援金を着服した悪質さはNPO関係者に衝撃を与え、ずさんな運営を放置した町や県の責任も問われた。
 現在、松田さんは認定NPO法人「市民公益活動パートナーズ」(福島市)の理事として公益活動を担う団体の運営や監査の支援を行うほか、過去の不祥事を調べ、組織の在り方を研究する。「団体の自浄作用が機能しない場合、『行政には権限がない』などと言ってはいられない」と危機感を募らせる。
 不正が起きる要因の一つに、運営側の会計や法律の知識不足が指摘される。
 認定NPO法人「杜の伝言板ゆるる」(仙台市)は15年から、補助金の申請方法や労務管理、決算書の作成といった事務の基礎を学ぶ講座「NPO法人のための組織運営力強化プログラム」を仙台市と開設する。設立間もないNPOの参加を想定していたが、組織の新旧を問わず申し込みがあるという。
 講座に参加した団体の代表は「使命感を持って活動を始めたものの、事務に人手と時間を取られ苦労している。早く知識を付けないと死活問題だ」と話す。
 宮城県内ではこの20年で、補助金の不正受給や事業報告書の未提出などを理由に9団体が法人認証の取り消しを受けた。
 杜の伝言板ゆるる代表理事の大久保朝江さん(70)は「数字と情報をきちんと出さなければ社会に信用されない。資金を出す側も運営力をしっかり見極める必要がある」と強調する。

[メモ]NPO法人は、事業年度が始まって3カ月以内に前年度の事業報告書や貸借対照表といった情報を職員や利害関係者に公開する義務がある。行政は事業報告書が3年以上未提出の場合などに、改善措置を求めたり認証を取り消したりすることができる。


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2018年12月04日火曜日


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