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<外国人労働者は今>秋田の現場から(下)模索/語学力が壁 実らぬ投資

施設利用者と談笑するノエラさん(右端)ら3人のフィリピン人スタッフ。利用者の間でも人気の存在だ=10月中旬、秋田県五城目町

 国が外国人労働者の受け入れ拡大へとかじを切る。事実上の永住も認める在留資格を新設する方針で、国会で大詰めの審議が続く。全国最速で人口減少が進み、労働力不足が深刻化している秋田県では外国人労働者にすがりたいとの至情が膨らむ。一方で制度上の課題も多く残されている。期待と不安が交錯する現場に入った。(秋田総局・鈴木俊平)

<仕事の合間授業>
 「体調良さそうですね」
 秋田県五城目町の介護老人保健施設「湖東老健」で10月中旬、フィリピン人職員のノエラ・マリ・レイエスさん(30)が利用者と会話を弾ませていた。
 この日は仕事の合間に秋田市の大学教授から日本語を教わった。施設内で2時間授業を受け、休憩を挟んで急ぎ足で仕事に戻った。
 介護分野の経済連携協定(EPA)に基づき2016年12月から施設で働くノエラさん。20年1月に控える介護福祉士国家試験に向け、仕事と勉強の両立に励む。「合格を目指して頑張りたい」と笑顔で語る。
 湖東老健はノエラさんら3人のフィリピン人の介護士候補生を受け入れている。加藤稔樹事務長は「積極的に話し掛ける明るい性格で利用者との関係も良好。日本人職員が不足すれば受け入れ拡大も考えたい」と高く評価する。
 国家試験に合格すれば在留期間を延長できるため、合格者がより待遇の良い職場に移るケースも少なくない。加藤事務長は「賃金面のほか担当業務や宗教にも配慮した環境を整える必要がある」と身構える。
 EPAによる介護分野での受け入れは、母国の学校や大学を卒業した看護・介護士資格所有者が対象。人手不足の現場では即戦力となるため、期待は高い。
 だが、国家試験合格への道のりは厳しい。語学力が一番の壁とみられる。日本語で焦らず答えてもらうために試験時間の延長措置などを講じたことで合格者は増加傾向にあるが、17年度の合格率は50.7%にとどまる。
 日本人と同等の賃金や住居管理費など受け入れる側の負担も小さくない。現場は理想と現実の乖離(かいり)にあえぐ。

<人材レベルに差>
 湯沢市で病院や介護施設を運営する医療法人せいとく会。住まいや地域住民による日本語教室などを用意し、10年から介護士や看護師の候補生計約20人を受け入れた。しかし国家試験合格者は1人のみ。「投資」は結実していない。
 菅康徳理事長は「日本での資産形成が目的に見える候補生もいた。受け入れ側の努力や制度設計だけでは限界がある」と吐露する。
 25年までに約34万人が不足すると予想される介護人材。国はEPAをはじめ在留資格、技能実習といった制度を使い、介護分野の人材確保策を矢継ぎ早に繰り出してきた。次なる一手として導入する新在留資格では、5年間で約6万人の受け入れを見込む。
 国際教養大(秋田市)グローバルスタディーズ課程の秋葉丈志准教授は「制度の乱立で人材レベルに差が生まれている。各制度の成果や課題を検証し、新しい在留資格に生かすべきだ」と指摘する。
 その上で「日本語教室や行政サービスを充実させ、生活者として支える仕組みが不可欠だ」と強調。「それらの整備なしでは受け入れが失敗する可能性は否めない」と訴える。

[介護分野の経済連携協定(EPA)]日本は2008〜14年度にインドネシア、フィリピン、ベトナムの3カ国と締結。18年度までに約4300人が来日した。介護福祉士国家試験の17年度の合格率はインドネシア43.2%、フィリピン38.4%、ベトナム93.7%。ベトナムは入国前の日本語研修が1年間と他の2カ国より半年長く、語学力の差が合格率を引き上げたとみられる。


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2018年12月05日水曜日


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