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<市民の力 NPO法20年>(5)完 協働・連携/活動継続の切り札に

備中茶綿を収穫する関係者やボランティア=11月、いわき市(ザ・ピープル提供)

 特定非営利活動促進法(NPO法)が施行されて、12月1日で20年を迎えた。「NPO」の言葉は広く浸透し、法人数も全国各地で増えた。福祉や教育、まちづくりなど行政や企業の手が届かない問題に取り組み、存在感を高めてきた。社会情勢の変化や東日本大震災の発生を機に資金獲得の工夫や事業の深化など、さらなる自立が求められている。NPOが抱える課題を探った。
(生活文化部・長門紀穂子、越中谷郁子)

<方向性が合致>
 NPOが活動を継続するための切り札の一つに、企業との協働がある。一法人ではできない事業も、企業のノウハウが加われば可能になる。
 少し茶味がかかったTシャツやタオル。「この色合いに意味があるんです」。NPO法人「ザ・ピープル」(いわき市)理事長の吉田恵美子さん(61)が力を込める。同法人が2012年から手掛ける「ふくしまオーガニックコットンプロジェクト」で栽培する備中茶綿が出す色だからだ。
 プロジェクトの重要なパートナーが、オーガニックコットンの輸入や生地作りを手掛ける「アバンティ」(東京)。吉田さんは11年7月、東京のNPO法人の招きで宮城県亘理町を視察した際、アバンティ社長の渡辺智恵子さん(66)と出会った。
 吉田さんは東京電力福島第1原発事故による耕作放棄地の増加を食い止めたいと思案する。渡辺さんは国内でオーガニックコットンを作りたいと模索する。2人の方向性が合致した。
 吉田さんは一法人の力で製品化まではできないと考え、仲間と企業組合を設立。(1)ザ・ピープルが原綿を栽培する(2)企業組合が原綿を買い取り、製品を企画、発注する(3)アバンティの関連工場で製品化する(4)企業組合が製品を販売する−という流れをつくった。
 「アバンティが築いた製造ラインに入れてもらった。力を貸してくれる専門家がいたからこそできた事業」と吉田さんは言う。
 備中茶綿の畑は、いわき、南相馬両市や福島県広野町など計6カ所の約3ヘクタールに拡大し、一番多いときで1トン(種付き)を収穫するまでになった。それでも量はまだまだ足りず、アバンティが輸入した綿と合わせて製品化する。
 吉田さんは「一緒に歩んでくれる企業がいることは強みだし、営利活動ができる企業組合を設けたことで持続可能な事業になった」と説明した。

<広域的に発信>
 一つの目標の下に、NPO法人や団体、個人がつながって活動する連携組織も生まれている。震災の伝承を担う「3.11メモリアルネットワーク」(石巻市)は発足して約1年。宮城県内外の62団体・企業と349人で構成する。語り部として活動している人だけでなく、活動を応援したいという人も名を連ねる。
 事務局の担当者は「個別に伝承活動を継続するのは大変。より広域的に発信する必要性も現場から求められていた。ポスト復興を見据え、10年後の活動を支えられる体制を整えたかった」と設立の意義を話す。
 メーリングリストで情報を共有するほか、シンポジウムなどの企画、語り部の質の向上プログラムにも取り組む。自治体もアドバイザーという形で入り、震災遺構の活用について意見を交換するという。
 3億円を目標に基金も設立した。「縦に横につながることで、次世代の語り部を育てていける」。担当者は期待する。

[メモ]東日本大震災後、企業のCSR(企業の社会的責任)の意識が高まった。仙台市が昨年、市内の事業所を対象に行った調査で、回答した680社のうち54%が「CSRを重要視する」と答えた。企業や行政、NPO、財団など異なる組織が共通の目標を掲げ、互いの得意分野を生かして特定の課題解決に当たる「コレクティブインパクト」という取り組みも広がりつつある。


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2018年12月05日水曜日


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