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<酪農郷の軌跡 岩手・和光集落>(下)転換期/新たな象徴世代つなぐ

ジェラート販売店「牧草の丘」を切り盛りする佐藤さん(左)
11月11日の入植70年祝賀会で初代の古里山形県の花笠音頭を披露する4代目の子どもたち

 切り立つ奥羽の山並みを背景に酪農を営む岩手県金ケ崎町の和光集落が今年、入植70周年を迎えた。困難の中で山林を切り開いた初代、集落の自治に奔走した2代、都市化の波に立ち向かう3代。戦後日本の片隅で、脈々と受け継がれてきた開拓精神の軌跡をたどる。(北上支局・布施谷吉一)

<機械化と高齢化>
 岩手県南部を代表する酪農郷、金ケ崎町の和光集落で機械化が進む。牛舎では搾乳ロボットがフル回転し、生乳の量や品質の管理はコンピューターが行う。
 酪農家の一人は「高品質は当然のことながら、量も必要だ。昼夜を問わずコンピューターから連絡が来て対応している」と言う。
 毎年のように表彰を受ける「和光品質」。その中核を担っているのが入植3代目だ。「三世会」会長の倉田和久さん(38)は、両親と手分けして乳牛約100頭を飼育する。
 「いかに無駄をなくして乳量を増やすか。頑張ったら、それだけ結果が出る」とやりがいを語る。一方で「動物が相手で休みはない。規模を維持するのがやっと。親が元気なうちは良いが、もし体を壊したら…」。
 集落の屋台骨を支えてきた2代目の多くは60歳を超えた。町内を見渡せば自動車や半導体の関連企業が集積し、働き口はいくらでもある。酪農をやめて会社勤めに出る3代目もいる。
 代々受け継いできた開拓精神は、時の流れとともに転換期を迎えていた。

<「牧草の丘」開業>
 何とか酪農郷の原風景を守りたいと入植から70周年を数えた9月、2代目が中心になってジェラート販売店「牧草の丘」を開業した。原料には出産7日目の母牛から絞った栄養たっぷりの生乳を使う。
 「地域の良さを知ってもらう機会ができた」。店長の佐藤シヅ子さん(67)は製造、販売に忙しい日々を送っていた。
 開店してからは酪農の仕事を夫と息子に任せきりで、家族に負担をかけている。「でも地域を大事にしないと、せっかく築いてきた和光が変わってしまう」と使命感が佐藤さんを突き動かす。
 店舗は住民有志で設立した会社「グラスヒル和光」が運営。社長の矢作実さん(70)は「子どもが遊べる公園を造り、後継者も育成したい。仕事に子育てに多忙な3代目も関わるようになってくれれば」と願う。
 かつて地元にあった和光小賛歌の一節から採った「牧草の丘」。集落の新たな象徴には「世代を超えて住民が集う場所になってほしい」という2代目から3代目への期待が込められていた。


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2018年12月08日土曜日


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