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<東日本大震災 復興人>水産業活性化後押し 最適解見つけ高みへ

水産業の活性化に向けた取り組みを語る松本さん=石巻市のヤフー石巻ベース

◎石巻市・ヤフー石巻ベーススタッフ 松本裕也さん(33)

 「自分の会社ってどんな職場だろう」「地域や従業員、業界にとって良い会社とは?」
 IT大手のヤフー(東京)が東日本大震災の最大被災地となった石巻市に開設した支援拠点「ヤフー石巻ベース」で、水産加工業の若手経営者らを対象にしたセミナーが開かれている。
 今年7月に隔月で始まり、ヤフーの組織開発の研修方法を取り入れた。一般的な座学と異なり、発言の機会が多い。参加者は最初は驚くものの、現状や課題が明確になる効果を実感するという。
 企画を担う松本裕也さん(33)は「じわじわと効く漢方薬のようなものかも…。人材確保に悩む水産業の課題解決を後押しできたらいい」と語る。
 2009年にヤフーに入社した松本さんは、社会貢献の部署にいた15年11月、石巻に赴任した。同社が支援する地元漁業者がつくる一般社団法人「フィッシャーマン・ジャパン」の事務局次長を務め、今年7月、水産加工業などの活性化を目指す「UPDATE水産業プログラム」を始めた。セミナーはその一環だ。
 業界は深刻な人手不足に直面している。家族経営が多く、労働条件が厳しい例が少なくない。「変わらなければ」と危機感を抱く経営者らと出会い、アイデアを練ってきた。
 セミナーに加え、年2回、大学生のインターンシップも実施。石巻市と宮城県女川町の約10社が協力しており、若者がそれぞれの職場を活気づけている。
 石巻への赴任には迷いもあった。打診があったのは14年ごろ。復興支援の形やネットワークが既にできつつあり、「いまさら行けない」とも感じていた。
 決断を後押ししたのは自身の経験だった。出身は福岡市。東京で過ごした学生時代からNPOなどで地方活性化に取り組んできた。
 「石巻も課題を抱える一地域。復興というキーワードにとらわれずやってみよう」。震災後、陸前高田市で支援活動をした妻でNPO職員の舞さん(31)の理解もあり、夫婦で移り住んだ。
 当初は勝手の違いから「転職したような感覚」に陥った。東京と異なる地元のペースもある。「変わる組織、若者が実力を試せる会社には人が集まる。本音を聞いて最適解を見つけたい」。人々と向き合う中で事業の軸が見えてきた。
 政府は復興期間を10年間と定めた。20年度で復興庁も廃止されるが、現場にいると「区切りなんてない」と感じる。震災11年目以降のポスト復興を見据え、「今のうちにめちゃくちゃ高いところまで飛んでおかないといけない」と語る。
 16年7月4日、石巻で長男が生まれた。息子の成長に地域再生の歩みが重なる。
 名前は「興(こう)」と付けた。
(報道部・菊池春子)

<描く未来図>社会参画の実感を

 地域の中で多くの人が社会に参画している実感を持てるようにすることが重要だ。経営者は青年会議所などを通じて課題を共有する機会があるが、従業員らは将来像を描きにくい面があるのではないか。一人一人が社会での役割を感じられる組織には人材が集まる。従業員へのアプローチを探り、活性化を支援したい。


2018年12月11日火曜日


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